ハリハリのブログ

人に見せても良いと判断した思想感情を記録しておくための保管庫

ミュージカル「HEADS UP!」感想

2017年の観劇納めが最高の演目だったので感想を書きます。

いやほんと。このブログ読まなくてもいいんで観に行ってください最高ですから。言いたいことはそれだけなんです。

 

 

www.m-headsup.com

 

ミュージカルファンなら誰もが知る”あの名作”が1000回目の公演を終え、華々しく終了する、はず…だった。
しかし、主演俳優の鶴の一声で、某地方都市の古い劇場で1001回目を上演することに!

さあ、現場はてんやわんや。舞台美術は廃棄済み、スタッフの人手も足りない、キャストのスケジュールも押さえていない…、さらに、舞台の総指揮を執るのはこの作品が初めて、という新人舞台監督!とんでもない条件の中でもスタッフたちは必死に幕を開けようと奮闘する。幸か不幸か、チケットは完売、つまり観客が待っている!!

舞台本番当日、新米“舞台監督”のデビュー作は問題山積!
果たして幕は無事に開けられるのか…。

HEADS UP! あらすじ
http://www.m-headsup.com/introduction.html

 

f:id:harimarin:20171218205904j:plain

体ごと楽しめるミュージカル・コメディ

シリアスな作品も決して嫌いではありませんが、私は笑える作品のほうを好きになる傾向にあります。
創作やったことある人ならわかると思うんですけど、人を笑わせるのって難しいんですよ。泣かせるのも難しいですけど笑わせるのは本当に難しい。
コメディ脚本書けって言われたら、私は逃げ出したくなります。
だからまず質のいいコメディは尊敬が先に立つんですが……。

それはそれとしてHEADS UP!はめちゃめちゃに笑わせてくるんですよ!
時間当たりの笑った回数、アベニューQより上かもしれない。一幕終わりとか笑い死ぬかと思ったわ。
しかも力技の笑い(変顔とか奇声とかイジりとか)はほとんどなくて、ひとつひとつの笑いどころが上質。
下手なお笑いライブ行くより笑えることは保証します。

基本的にはミュージカル好きに狙いを定めた作品ですが、舞台をあまり見ない人もきっちり引き込んでいくようにつくられています。(ド頭のシークエンスはほんとうに良くできている。大人向けの「♪幕を開けよう(劇団四季)」ってかんじ)
ひいきの役者が出ていたりするなら観て損はないです。
生で見る哀川翔ヤバかったですよ。最前で見てしまったせいもありますが色気にくらくらきました。

 

リッチな曲と振り付け

私が和製ミュージカルを敬遠する理由の一つは、単純に質が低いからです。
役者ではなく、脚本演出音楽振付あたりになーんか逃げを感じることが多い。テニミュに代表される2.5次元のほうが、芸は荒くてもチャレンジしている分すがすがしいです。
腹が立つのは、海外作品の翻訳上演をやるなら難しいことやらせるんですよ。役者も応えるんですよ。つまり海外作品ができる(歌って踊れる)スキルは役者のほうにあるにもかかわらず上流工程が逃げをうつんですよ!

で、HEADS UP!がどうだったかというと、めちゃめちゃ攻めてました。
いや重唱とかちょっと稚拙だったところもあったけどねでも豪華だった。ふだん翻訳歌詞ばっかり聞いてるから、最初から日本語で付けられた歌詞の聞き取りやすさに泣きそうになりましたよ増えろ良質和製ミュージカル。
「チケットは売れている」とか最高でしたね。

振付もわかりやすくて楽しくてかっこいいというミュージカルとしては最高オブ最高。川崎悦子さんってどなただろうと調べてみたらキャラメルボックスとかの振付もしてたんですね超納得。

 

舞台が好きな人すべてに刺さる

HEADS UP!は舞台裏ミュージカルです。
いわゆる楽屋ものくくれなくはないのですが、やっぱり「舞台裏」と言うのがしっくりきます。なぜなら役者ではなく裏方スタッフの話だから。
主役は舞台監督。ストーリーの中心は仕込み*1とバラし*2

私も大学サークルでミュージカルをやったことのある人間なので、めちゃめちゃ懐かしかったです。なぐり(=かなづち)とか久しぶりに聞きましたわ。
「ここ危ないよ」みたいなセリフが何度も出てくるんですが、わかるわかる。劇場ごとに危険な場所って絶対あるんですよ。見えづらい段差とか天上低いとか。お互い声をかけあって注意し合わないと誰かが怪我するんです。(新人が怒鳴られる一番の原因であり、スタッフも声を出さないと怒られる理由)
観る専の人にとっても、「裏ではこんなことやってるんだー」と感慨深いことでしょう。演劇ではなく、コンサートやライブが好きな人にも通じるものがあると思います。

 


さて、ここからネタバレありの感想になります!

行をあけるので観てない人は鑑賞後にどうぞ~。↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこまでも誠実な構成

HEADS UP!のテーマはなにかと問われれば、私は「舞台愛」であろうと答えます。
古今東西、舞台とは何か演劇とは何かという作品はたくさん作られていますが、ここまで深みがあって楽しい回答を見られて本当によかった。

印象的なのはラストで新藤(新人舞台監督)が撤収直前の最終確認を行い、床板のあいだに挟まった紙切れ(?)を見つけて取り除くシーン。
あれ、雪のシーンとかで使った紙ふぶきの可能性もあるのですが、おそらく「ドルガンチェの馬」の前に使った団体が残していったゴミなのではないかと思います。
「クギ一本残してはいけない」と歌われたように、ドルガンチェのカンパニーも物理的にはなにも黎明会館に残してはいかなかった。むしろゴミをひとつ取り除いていったくらいです。
作って壊して、何も残さない。その場にいたスタッフと役者とお客さんの熱だけが劇場に沁み込んでいく。その熱は目に見えなくてもたしかにある……と信じて舞台は上演され続ける。

美しいなあと感じ入るしだいです。
あのシーンに説得力を持たせたのは中川・相葉両者の芝居ももちろんですが、HEADS UP!のカンパニー全体がその思いを共有しているからこそだろうなと思います。

 


クソなところもちゃんと表現する

笑いにまぎれて、演劇業界のクソなところもちゃんと言及されてたのめちゃめちゃ誠実だなと思いました。
具体的には「あたしの夢は『女で舞台監督』」と話す小道具係とかですね。
夢は舞台監督、じゃないんですよ。"女で"舞台監督なんです。つまりプロで食ってる女の舞台監督がたぶん日本に存在していないか相当な希少価値だということです。ちなみにHEADS UP!の初演は2015年なので現代の話です。

小道具係役の新良エツ子さん、笑顔と元気が素敵だったのですがそれよりなにより胸がデカいんですよ。たぶんEはある。黒の半そでポロシャツがきれいなお椀型に盛り上がっていました。すげえ眼福だったというのはおいといて、間違いなくこのキャスティングはわざとです。
豊かな胸は古来より女性のシンボルなんですよ。それをしっかりもっている人が「舞台監督になりたい」と言うのマジしんどいなと思いました。

食えない役者がバイトのほうのプロになってしまうとか、大御所役者に振り回されるとか、ベテラン演出家に現場が振り回されるとか、役者のプライベートな人間関係で現場が振り回されるとか……
コメディタッチだから笑って見れますけどあれシリアスにやったら地獄絵図ですからね。エンタメ業界にいる人たちはほんとに覚悟ガン決まりだと尊敬するとともに、「もっとクリーンになってくれよ……」と思ってしまいました。
素敵な舞台の裏が地味なのはいいけど、裏がイリーガルでブラックなのは嫌だもの。チケット代を払っている以上、この点についても我々は共犯関係なのだと思います。

 

 

フツメンとブサイクが大活躍

メインキャラがだいたい出そろったところで思ったのは「すげー、美形がいない!!」でした。
新藤役の相葉裕樹さん、バイト君の池田純矢さんを除いて、残りの男性陣はおっさんとフツメンとブサイクとデブなんですよ。アンサンブルもブサイクにみえるメイク衣装。女性陣もアンサンブルと主演女優以外はパッとしない見た目。
ミュージカルってステージにいるひとみんな美形がふつうなので、めちゃめちゃ新鮮でしたフツメンだらけの舞台。
(あー、ブロードウェイ版のビリーエリオットはフツメンだらけだったな。ああいうかんじです)

黙ってたらパッとしないフツメンたちがめちゃめちゃ生き生きと裏方を回してるのはすごい元気がでます。
なにがすごいって、あの場でいちばんイケメンな新藤は自分に自信がないせいで微妙にオーラが薄いんですよ。演出部のおっさんたちのほうがよっぽど格好よく見えるレベル。
人間は顔じゃねえってのはこういうときに言うべき台詞ですね。

 

哀川翔がエロイ

生で哀川翔を見たのはじめてだったのですが、ヤバイですね。
引き寄せられるような色気がありました。くらくらした。

 

 

 

以上、思いつく限りの感想をあげてみました!

HEADS UP!はいいぞ。

*1:劇場で上演の準備をすること。大道具のセット、照明や音響の調整、衣装・小道具の搬入その他いろいろ。時間との勝負。危険。

*2:上演が終わった舞台を原状回復して撤収すること。スケジューリングによっては時間との勝負。危険。

遙かなる時空の中で6感想 ~最推しは村雨でした~

先日の景時(遙か3)エントリが予想以上にのびてビビったハリハリです。


にわかの私よりもずっと前から濃く長く景時を愛してきたであろう方々から「それな」「わかる」との反応をいただけて大変うれしかったです。景時さん愛されてる……!!

いまさらですが、自分の好きなことを言語化して説明できるのってひとつのスキルなんですね。TRPGをやっているのと他人のブログや考察系ツイッターを見るのが好きなせいで誰でもできることだと勘違いしちゃってたんです……。
まじで私、自分が語彙力高いとは思ってないし文章力も低いと思ってたんですよ。リアル友人に辞書を読んだことある人がいたりするもんで、アマチュア文字書きとしても底辺だと思ってました。ちょっと認識あらためます。謙遜はいいけど卑下はだめ。

 


では本題。

遙かなる時空の中で6全エンドクリアしたぞー!!

遙か3の感想記事と同様、テーマごとに思いつくまま書いてみます。言及してないキャラは好き嫌いというより、どう書いていいのかわかんなかったんです……。ルード君かわいかった。

 

ここから先はネタバレ配慮一切ないので、適宜対処でお願いします。
画像はいずれも遙かなる時空の中で6 公式サイトよりお借りしました。

http://www.gamecity.ne.jp/haruka6/


主人公 高塚梓-黒龍の神子

f:id:harimarin:20171102225152j:plain

歴代シリーズでは主人公は白龍の神子だったのが、今回はその対である黒龍の神子が主人公。

まず驚いたのは、一章序盤。ダリウスが「やっと笑ってくれたね」というセリフを言った時です。
ほんとだ、この子ゲームが始まってからしばらく笑う立絵が表示されなかった……!
異世界に召喚されたと思ったら鬼の集団に誘拐され、わけもわからず怨霊と戦わされる展開がしばらく続きます。
当然、主人公の気持ちとしては混乱と恐怖しかありません。笑顔を浮かべる余裕なんて生まれない。応答がまともにできていただけ立派なものです。

しかし望美さまであれば、あの状況でも「ルードくん強いんだね!(にっこり)」くらいはやりそうなもの。陽の気をうけた白龍の神子ってのはそういうものでしょう。
※ハリハリは遙かシリーズを3しかやっていないので比較対象が望美さまになりがちです。ご了承ください。

ゲーム開始から10分以上笑顔を見せなかった梓は、それだけで黒龍の神子たる証を立てたようにハリハリは思いました。あと、待たされたぶん笑顔がむちゃくちゃ可愛かったです。


もうひとつの特長として、この子は頭がいいです。あと脳内でちょくちょく毒を吐いてる。
(ずるい手を……)とか、(長考だったな)とか、(最低だ)とか、望美さまなら思い浮かばないようなことをこっそり考えていてかわいいです。

残念だった点をあえてあげるなら、せっかく黒龍の神子を主人公にしたならもっと性格を陰の性質によせたほうが面白かっただろうなというところでしょうか。ええ、ぶっちゃけ破壊も停滞もしてないよねと。
性格も明るいし純粋素直ないい子だし。つまり陽の気の気質なんですよね。あれを黒龍が好むのはちょっと納得いかない。せめて近くにいる人の寿命を縮めるくらいの設定があってもよくないですか?(よくない)
まあ、これに関してはガッツリやってしまうとネオロマンスシリーズの枠から外れてしまうという事情もあり難しいところです。

 


ダリウス 地の青龍

f:id:harimarin:20171102225148j:plain

私は綺麗な顔が好きです。
そんなわけで最初に攻略したキャラクターとなりました。
すごく王道にスマートに口説いてくれたかと思えば、バランス崩したときの冷たい狂い方がヤバくてよかったですね。シュークリーム怖いよ。
かなりの高ストレス下をもちまえのスペックで乗りこなしているキャラなので、恋愛を乗せるといいかんじにおかしくなるの良いです。

「ネックレスをつけるのを、やり直させてほしい」と梓が歩み寄るシーンがとても好きです。同じ行為でも、信頼していれば少しも怖くないというのは説得力がある。
梓が自力でダリウスたちの目的の理解に至ったときの会話も好きですね。梓を見くびっていたことの謝罪と賞賛をダリウスが行った(=力量をフラットに認めた)ことで、やっと対等な同士として協力ができるようになった感じがありました。

本作攻略キャラ中トップの能力と権力の持ち主。世襲制だった鬼の一族の首魁に外からあっさり就任したスペックはもちろんですが、彼が号令をかければ国中の鬼の一族が蜂起するのでその気になれば血みどろの内戦が起こせます。ゲーム本編では一族のほとんどが国外避難してたから目立たないんですけど、動かせる人数はけっこうヤバイ。きっと最終的にはアメリカのユダヤ社会的な立ち位置に入りこむのでしょう(勝手な妄想)。

好きなシーンは、一章終わり。

「俺はダリウス。鬼の一族を束ねる者。」
「そして君は――黒龍に選ばれた神子。破滅を呼ぶ神子殿だ」

めっちゃぞくっとしましたよ。鈴村健一さんすげえな!
一語一語、噛んで含めるようにささやいて梓に立場をわからせる台詞回し。もうこれ聞けただけで遙か6は名作!ってなりました。

 

 

里谷村雨 地の玄武

f:id:harimarin:20171102225212j:plain

 

推しです。
大正デモクラシー担当、年の差恋愛系。
そしてそして現代人枠!!!

「今回、主人公の巻き添えで時を超えちゃったキャラいないなー」と思ってたら隠れてた。びっくりしました。けっこうガチめにステルスかけてましたね。
珈琲のシーンで一度(ブラックコーヒーって大正時代の言い回しか?という疑問があった)、そして口述筆記のシーンでも違和感はあったのですが見抜くまでには至りませんでした。結実の花に噛んでるのはすぐわかったので悔しい。(レミゼのせいでカフェには政治結社があると夢見てるマン)
しかし梓ちゃん、旧字体新字体という言葉がさらっとでてくるとは教養があるな。

私も字が汚いので、村雨にはむちゃくちゃ共感しながらやってました。
現代人だとわかるまえは、ワープロorパソコンの存在を梓が教えて「お前の世界に行きたい」と言い出す村雨……みたいな妄想をしてたくらいです。うん、教える前に知ってたね。パソコンがない世界に放り込まれてさぞ辛かったでしょう。
キーボード筆記の偉大さは思考速度と筆記速度をそろえてくれる点も大きいので、ライターとしてはマジでしんどかったんじゃないかと思います。脳みその一部が奪われるくらいのインパクトはある。あの世界でも作家として身を立てた村雨さんすごい。

村雨さん恋愛イベントはどれもこれもむちゃくちゃ好みでした。これ!これだよ年の差恋愛の醍醐味は!!ってかんじ。
ハートがキュンキュンするというよりは、背中にビリビリきますね。緊張感がある。
35歳が16歳に手を出すのは勇気いる。わかるよ。若い時の数年がどんだけ大事か痛感してるからそれを背負うのキツいよね。なのに梓は村雨の葛藤を1割も理解しないでぐいぐい来るからね。別に梓が悪いんじゃなく、若いゆえの必然なんだけど。いやあ、しんどかっただろうなあ。
私がアラサーになったこともあり、村雨の気持ちもかなりわかるようになりました。年をとるっていいことだわ。

梓のアタックをかわす台詞がひとつひとつ丁寧で、ああこの人はペンで食ってるんだなと思いましたね。
行方知れずになった梓を発見して抱きしめているスチルは、自分を納得させている顔だなと感じました。おっさんの顔でした(好きです)。もちろん安堵のほうが大きかったんでしょうが、「あー、これだけこの娘に必死になって、見つかったら死ぬほど安心するんだから手放すのは無理だな」って再確認が裏で走ってるかんじ。おそらく梓よりも先に両想いだと気づいていて、しかし実際に手に取るのに死ぬほど時間かかるのが年の差恋愛ですごくいいです。


村雨シナリオで良かったのは、梓が「私をただの娘じゃなくて 民衆の代表者である神子にしてください。」と村雨に頼んだシーンですね。恋愛イベントの序盤、村雨の部屋でくつろがせてもらった梓が「私を神子ではなくただの女の子として扱ってくれる」と感じていたシーンと対になっています。
村雨は現代で梓とエンカウントしているため、彼女がただの女子高生に過ぎないことを知っています。そこに彼自身の思想信条もあわさって、「不憫なガキ」扱いするという気遣いが生まれたのでしょう。(ついでに恋も生まれちゃいましたが)
高塚梓という個人を村雨が大事に守ってくれたからこそ、いよいよというときに自ら「神子になりたい」とまっすぐ言えるようになったのは美しいです。現代人カップルっぽい価値観のあらわれですね。


本条政虎-地の白虎

f:id:harimarin:20171102225205j:plain

乱暴、がさつ、やさしさがあまり見えないと印象が悪かったので攻略が後回しになった人。ふたを開けてみたらとても面白いシナリオでした。

虎ルート(政虎はほとんどのキャラから虎と呼ばれるため、以降それに倣います)で最高に面白いのは序盤です。誰が何と言おうと序盤です。
助けに来てくれたお礼を言ったら好感度を下げられてびっくりしたよ!!

虎のイベントは、他のキャラとはあからさまに毛色がちがいます。良心的で謙虚で純粋で正しく優しい選択肢を選んでも好感度があがらないどころか、場合によっては下がるのです。
「実力を超えた人助けをすんな迷惑だ」「謝罪や返礼はモノ(金)で示せ」「ぱっと見かわいそうな側だけを助けるのは不公正を助長することもある」「他人の善意をただ信じて寄りかかるのは怠惰だ」といったことを、虎は序盤のイベントで教えてくれます。柄は悪いし、本人も善人ではないのですが言っていることはまっとうです。あと、乙女ゲー主人公に「秩序-善をつらぬくだけでは何も守れないどころか逆に迷惑」とズバッと言ってくれるキャラはなかなかいない。他の攻略キャラは「君の純粋さは素晴らしい」って言っちゃうからね。
良くも悪くも地に足がついた男で、主人公を飛び越えてプレイヤーにとっても有益な勉強をさせてくれるキャラだなと思いました。感動した。

虎からの教育により善を為すためのコストを理解した梓でしたが、その重さを知っても自分が善いと信じることをしようとするので最終的には虎のほうも感化されます。お父さんの件がすっきり解決した後の虎マジ最強でしたね。もともと力はあったけど思想がない人格だったところに、一本芯がとおると本当に強い。あまりに信頼できる。


あ、終盤で梓からは金も礼も受け取らないという虎に「お礼のキスもいらない?」と尋ねると、「……。」と黙ったまま3度に分けて好感度がガン上がりするというめちゃめちゃ笑えるシーンがあります。かわいすぎか。

 


萩尾九段-天の玄武

f:id:harimarin:20171102225209j:plain

初見ではあんまり好きじゃない見た目と声をしてたので、しばらくスルーしていました。他のキャラを攻略するうちに、情緒が幼いゆえに純粋で直球なところかわいいなとなってきて攻略を決定。甘いものがからむとめっちゃ真剣になるのかわいいよね。

星の一族という、龍神の神子を守る一族の末裔。役目を果たすための修業に幼いころから時間を費やしたため、世間の常識がちょっとあやうく、情緒がすごく幼い。なのに全キャラ中トップクラスに背が高い。そのギャップが気づけば萌えになっていました。

好意や恋心を恥ずかしいと感じないため、常に愛情表現がわかりやすい。愛情表現が「自分の好きなもの(=甘いもの)をプレゼントする」なのが小学生感ある。好きだなと思ったらお菓子を渡し、嬉しいなと思ったら甘味をプレゼント。

主人公がドレスを試着したところにエンカウントしたシーン、すごいかわいかったです。「変じゃないか確認したい」と梓が言ったら「確認する必要などあるものか!(=とてもかわいい!)」と食い気味で反応し、そして褒める言葉が見つからないことを全力で悔しがり、一生懸命考えて梓が綺麗だと言った千代紙の花束を作り「この花束より千倍、綺麗だ」と言い切る。

うっ……かわいい。
小学生男子の品が良くかわいいところだけを取り出して、大きな優男につっこんだようなキャラクターです。癒されます。かわいい。

愛情表現という点では小学生なのに、いざ星の一族として行動するときはびっくりするほど根性を発揮するのもギャップが大きくていいです。軍に飛び込み営業して神子召喚について首を縦にふらせたり、術を覚えるために徹夜してくれたり。
頑張れば未来が変えられるかもしれないなら努力するのが当然!って思考なのですが、……それは若干狂人に片足をつっこんでいることを周りの人は気づいてあげてほしい。

ちなみに村雨は異世界ジャンプ直後、九段の実家に居候していた過去があります。そのためこの二人はそれぞれのルートでからみが多いです。お互いの良いところが互いのルートでちらりと見える素敵な腐れ縁。

 

有馬一-天の青龍

f:id:harimarin:20171102225141j:plain

なんとなく他ルートでは印象が薄くて攻略が最後になってしまった軍人さん。
それもそのはず、この人は非常に素晴らしい軍人の鑑といえる人格の持ち主なのですが、そのせいで恋愛でもしないことには自分の職務に徹してしまうのです!だから他キャラルートでは彼の魅力は埋もれがち……。

とはいえ、初期の印象は悪くありませんでした。
「精鋭分隊隊長、有馬一だ。 よろしく、高塚。 案外、芯が強くて安心した。」という自己紹介と笑顔が、最高にさわやかだったからです。
直前まで梓に黒麒麟の件(ダリウスが梓の能力を利用して軍に打撃を与えた事件)を問い詰めていたのに、その件を梓が謝罪して神子としてはたらく決意を述べるとスパッと「仲間」としての扱いに切り替えたのです。
この人は今後決して黒麒麟のことは蒸し返さないな、と確信する一場面でした。
イベントを進めて行っても、恋愛感情より先に尊敬の念がガンガン育っていくかんじです。格好いいんだけどね。

有馬ルートは、ラスボスである邪龍の怖さが実感できるほとんど唯一のルートです。
(邪龍があんまり怖くないのは、遙か6の欠点の一つです。人心を乱す能力を生かし、民衆の頭をおかしくして流言からのリンチ虐殺とかやってほしry)
ただのしかばねのようになっている有馬発見からの一連の流れはなかなかドキドキしました。

恋愛面については最後の最後まで朴念仁の堅物ぶりを貫いてくれた我らが隊長殿でしたね。人格が高潔すぎると恋愛って難しいんだなと思いました。恋は盲目で惜しみなく愛は奪うもの。恋しい相手を大切にするだけでは恋愛って成立しづらいところ、あります。
良い軍人ではあるのですが、良い夫になるのには訓練が必要そうだとED後がちょっと心配になるカップルでした。
友部と秋兵がうまいことやわらかくしてくれるといいなあ。


あ!そうそう有馬ルートを最後にしたせいで、友部が元気になったことを私は全クリぎりぎりまで知りませんでした!
例にもれず友部めっちゃ好きで、夜会のシーンすごい悲しかったから嬉しかったです!今後はもうちょっと慎重になれよ!

 

 


その他感想

駒野千代-白龍の神子 

f:id:harimarin:20171102225147j:plain

ボイスを聞いた瞬間に「これは白龍の神子ですわ……。美しい魂ですわ……」と心から納得しました。リアルにいたら神に愛されすぎて早死にしそうな子だなと思ってたら本当に病弱設定だった。よかったネオロマ世界でなければ死んでいた。

明るい乙女ゲー全般に通じる問題として「お前らもっと葛藤しろ」というものがありますよね。ぶっちゃけ千代の初手から「神子の使命をまっとうします!」と覚悟ガン決まりなかんじもどうなのよと思わないではなかったですが、あの声と立絵の説得力がすごすぎたのでいいです。


戦闘システムについて

動ける方向が多いカードは正義。(←将棋とか死ぬほど苦手マン)

属性相性のある将棋的なシステムでした。駒に相当するキャラクターカードは、戦闘に勝利した際の経験値のほかに育成専用カードや敵キャラカードを食わせることで成長します。
チュートリアルで育成を説明された瞬間ソシャゲじゃん!って思ったのですが、ソシャゲとはちがって攻略キャラのカードを食わせたりすることはありません。平和。

 

背景について

影絵的な背景がとても好みでした。大正時代という舞台設定にもよくあうレトロな雰囲気。
恋愛イベントでもスチルでなく影絵で表現されるシーンが各キャラ1か所はあり、とてもロマンチックで大好きでした。虎が黄泉に追いかけに来てくれるところとか特に良かったですね。

 

全体ストーリーについて

えー、深く書くのが怖いので箇条書きします。
固い単語を選んでいますが、ぜんぶシナリオ中に起こったことです。

  • 暴走気味の軍拡をつづける軍部
  • 人狩り」と俗称される強制徴兵
  • 違法な植物を用いて強力・完全服従な兵士を作成
  • 邪神が現れて逃げ惑う市民に「竹槍で最後まで戦え」と発言する軍上層部
  • 軍による情報隠ぺい
  • 被差別民族への流言(軍主導)


……いや、これ大正ロマンの皮をかぶっただいにうわなにをするやめ

 

大団円ルート

とつぜん攻略キャラが全員ウェイター姿のスチルが出てきて爆笑した。欲望に忠実すぎる。

 

 


ひとまず感想は以上です。
村雨さんの珈琲が飲みたい。ブラックで。

 


余談

九段だったかダリウスだったかが、「白龍の神子は弱いので八葉を選んで守護してもらう」という話をした時に彼女↓の姿が浮かんだのは私だけではあるまい。

f:id:harimarin:20171102225804p:plain

 

余談2

村雨は大正時代で小説家をするにあたり、「現代(21世紀)の出来事を幻想的に脚色」した作品を世に出しています。スカイプを念話風味で書くとかかな……。
プレイ時はただ感心していたのですが、全クリ後にふと思い浮かんだのは「星新一はタイムスリップをしてきたのでは?」という妄想でした。

星新一作品が「予言」のようになった話あれこれ - Togetterまとめ

だってふつう思いつくか?コンテンツは無料になったけど死ぬほど広告が出てくる世界とか、共通の趣味をマシンが検索して話をもりあげてくれるストーリーとか。(長編があまり面白くないというのも含めて、すごくそれっぽい)
星新一先生には大変失礼なことと承知の上で、彼が未来人だったと考えるのはけっこう筋が通ってて面白いです。なんとなく現在よりもう50-100年くらい未来からきてる気がする。

遙かなる時空の中で3感想 梶原景時について語りまくってみた

はい、誰も待っていないでしょうがお待たせしました。
前回予告したとおり、梶原景時についての記事です。
まさか乙女ゲーから推しキャラ上位ランカーがでるとは予想もしていなかったのですが、大好きです。

以下前回同様ネタバレ祭りですので自己管理をお願いします。

 

 

f:id:harimarin:20171024202031j:plain

 

惚れたきっかけ

そうですね、まずは景時に落ちたきっかけからお話ししましょうか。
景時の初回スチルは、庭で鼻歌なぞ歌いながら上機嫌に洗濯物を干しているシーンです。そのせいで第一印象は「お母さん」。あーなるほどね、その枠ね。ねーな。(おさんどんキャラは守備範囲外)
……というのがファーストコンタクトでした。第一印象だけならブービー争いというかんじ。
ほどなくして景時が「洗濯が好きで戦が嫌いっていうの、内緒にしてくれない?」と頼みに来るシーンがあり、たんなる軟弱ものではない、むしろちょっと苦労してそうな雰囲気は感じたのですが、印象が大きく上がることはありませんでした。

そんな景時が一気に最推しへ駆け上がったのは、花火イベントです。正確には、花火スチルのあとの会話シーン。
景時の使用武器は源平時代にも関わらず、銃。射出は火薬ではなく陰陽術でやっているそうですが、問題はそんなところじゃない。異世界とはいえ元寇前になぜ銃が発想できた。天才か。
などとプレイヤーが驚いていると、景時はこう続けるのです。
陰陽道の修業をしたのはいいものの、才能ないし本番に弱いのでいざというときに術を失敗してしまう。だからこうしてあらかじめ準備しておけば正確に術を発動できる道具を作った。昔から道具をばらしたり組み立てたりするのは好きだったから」

 

 

……好き!!!!!
あなたとなら結婚できる!!!!!

 

すみません、ひとりで盛り上がってしまいました。
どこが私の琴線に触れたのかと言いますと、「求められる結果を出すために、もっとも合理的な手段を模索し実行できる」男であることが凝縮された発言だからです。はい、そういう男が好きです。
たとえばこれが九郎だったら「本番に弱いなら千回でも万回でも練習する!それが兄上の望みだ!」みたいな脳筋解決をはかるんですが、景時はそうじゃない。自分ができることを俯瞰して、より成功率が高いと踏んだら正攻法じゃないやり方を採ることができる。しかも自分が好きで得意なDIY性を盛り込んでさらに能率を上げている。(モチベーション管理は長期的な成果に不可欠です)
その考え方は彼の軍事行動にも表れていて、陽動やら周辺勢力への根回しやらをちみちみ行うことでコスパ良く成果をあげることを好みます。積極的はったりを是とする男です。
一騎打ちの前に名乗りをあげるような時代、正々堂々ものごとに挑まないのは恥ですからそもそも迂回路が頭に浮かばない人も多いはず。その中で、きちんと楽で正確で自分に向いている方法を選べるのは彼の強さだと思います。

 


「一緒に逃げてくれ」はヘタレじゃない

景時恋愛ルートのハイライトは壇ノ浦直前、「一緒に逃げてくれないか」と主人公に頼み込むシーンだと思っています。スチル見て死ぬほどきゅんときた。あのすがりつき方最高ですよね。井上さんのボイスもいいですよね。
あのシーン、景時そんな好きじゃない人からは「ヘタレだ。ダメ男だ」って言われてるんですが、逆なんですよ。あれは景時がやっと自分と向き合い始めたからこその混乱です。心が折れて膝をついて年下の女の子に縋り付くのはむしろ進歩なんです。

頼朝の臣下になってからずっと景時は、頼朝の命令と、家族や郎党の安寧と、前者二つを守るために犠牲にするものとのバランスをとることに必死でした。チートパワーをもつ頼朝に逆らえば一族郎党皆殺しは明らか。もし頼朝が気まぐれな暗君であればまだ万に一つを追って逆らうこともあり得たでしょうが、残念ながら頼朝は合理的でした。合理的ということは、利用価値があるうちは景時と郎党の立場は保障されるということ(もちろんできるギリギリいっぱいの仕事をやらされるということでもある)。そのせいで彼はリスクを冒すきっかけをつかめませんでした。
景時自身が語る生い立ちから、そもそも頼朝に仕える前からかなり自己肯定感が低い人格だったことがうかがえます。修行の過程が武芸(向いてない)⇒陰陽道(向いてない)。彼はなまじ目端がきいてしまうので、父の期待通りにできない落胆をもろにあびたことでしょう。
それに加えて頼朝から郎党の命を盾にブラック業務(量も内容も)を遂行し続けたら、ふつうに頭がおかしくなります。人当たりの良い軽薄なお兄ちゃんを演じられただけでも大したものです。しかし、異常な状況でふつうに振る舞えるというのはやっぱりどっかがおかしなことになっているわけで、それが福原での「オレなんてどうでもいいんだよ。怒っても悲しんでも疲れるだけじゃない、君も笑ってよ。駄目な奴だ、って笑えばいい」という発言につながるわけですね。典型的な抑うつ状態です本当にありがとうございました。

ところが遙か3の主人公はハイパーポジティブ女神なので、上記の発言を受けても「景時さんは強い」と言い切り、さらに「景時さんを置いていけない。いっしょにいたい」「あなたに死んでほしくない」と景時を案じるセリフをぽんぽん言ってくれるわけですよ。自分なんてどうでもいい、自分のことにかまけてる余裕はないと思っている人にこれは効く。全快はしないけど、重症すぎて感覚がないみたいな段階からは脱することができます。メンタルの回復がはじまります。

……すると何が起きるかというと、自分が抱えてきたストレスがもろに目に入ってしまうわけです。それまで見る余裕がなかった澱みに、気づかずにはいられなくなる。
ブラック業務と、自分が守るべき郎党と、八葉の仲間と、大事な妹と母親、そして「景時さんといっしょにいたい」と言ってくれる女の子を殺せという命令書。おそらく暗殺命令はこれが最後ではないし、壇ノ浦が終わっても周辺勢力の平定のために戦は続く。
キャパオーバーです。無理です。「逃げたい」ってなるでしょう。
そうやってバッキリ心が折れたところへ主人公が来たら、そりゃあ「オレと逃げてくれ」って言いますよ。現状唯一の精神安定剤だし。「君とならここから抜け出せると思う」って言うよ。逃げ切れる、ではないところがミソです。オレのことを案じてくれる君が一緒なら、逃げたいというわがままを通す勇気が出るという意味です。
(しかしこの記事書くために景時ルートやり直したんですが、「オレと一緒にいるって言ってくれただろ」ってセリフ、井上さんの芝居もあいまって最高に情けない。好き)

この「一緒に逃げてくれ」が景時にとって進歩であると最初に言いました。誰しも覚えがあるでしょうが、何かを乗り越えたいならまずその対象を直視する必要があります。
「オレって駄目な奴だからさ~(だからオレが苦しいのはオレのせいなんだよ)」ではなく、「そもそもこの状況がクソで、未来に希望もあんまりない。オレは精一杯やっているがいつまでも持つとは思えない」ってことを見なきゃなりません。
ここで心が折れっぱなしになっちゃうと景時バッドエンドみたいな悲惨な事態になるのですが、まあそれはそれです。個人的に、「一緒に逃げてくれ」からつながるバッドエンド2本のうち処刑エンドはけっこう好きです。よく頑張ったなって思います。
遙か3の主人公は鬼プレイイングマネージャーなのできっちり尻を叩いて立ち上がらせてくれます。さすがヒーロー。こうしてどうにかストレッサーの本丸に立ち向かうことを決めた景時の逆転劇がはじまるわけです。

 

中間管理職をなめちゃいけない

顔色をうかがうスキル

いきなりトーキョーNOVA(TRPG)を知っている人にしかわからない話をしますが、景時のスタイルはタタラ エグゼグ◎クグツ●だと私は考えています。エグゼグ・クグツと書いて「有能な中間管理職」と読みます。

前述のとおり景時は頼朝の臣下としてすさまじい綱渡りをしてきたわけですが、その間ずーーーーーーーっとやってきたことのひとつは「頼朝の顔色をうかがう」ことだったのは想像に難くありません。
そもそも怨霊退治の道中でも、弱音を吐かない根性がありすぎる女子二人の体力の限界を(本人たちが気付く前に)察知して「オレつかれちゃった~休憩にしようよ~」と言ってくれるような性格です。主君の顔色なんて息を吸うように読んでいたに違いない。

そうやって空気を読む、偉い人の顔色をうかがうのは一般的に格好の悪いこと、ヘタレの所業です。しかし恋愛ルートの大一番で景時が勝利したのは、頼朝の顔色を読みまくっていた経験値がものをいったと言わざるをえません。あのタイミングで押し切らなければ、ブタをロイヤルストレートフラッシュに見せかける手は成らなかったでしょう。
もう私はあの勝ち方大好きで、エンディング聞きながら喜びの舞を踊るくらいでした。だって景時の苦労が最高に報われた瞬間でしょう。幼少期から不本意なことをやらされ続けてきた男が、自己肯定できないミスター器用貧乏が、その中途半端に広い経験値ゆえに勝ちをかっさらうの格好いいじゃないですか!よくやった!

 

敵に回すと怖い男

十六夜ルートに目を向けましょう。
平泉編にシナリオをすすめたプレイヤーはみんな一度はこう思ったはずです。
「景時こっええええええええ!」
不本意なのはにじみでてるし、八葉を解雇されたときに本気で悲しそうなの辛いんですが、それはそれとして九郎一行を追い詰める手に容赦がない。九郎の十六夜ルートで景時に会いに行くと「オレはやるとなったら絶対に勝てる手はずを整えておく。君たちに勝ち目はない」みたいなことを言われて震えあがりました。(しかし今思うと半分はったりだったのかもしれない)
ああ、あと九郎を景時が不意打ちしたあとの選択肢で「もうこれ以上撃たせない!」を選ぶと「どうやって?どうやってオレを止めるんだ?(君はその手段をもってないと知ってるよ)」って静かに聞いてくるの酷えなって思いました。ポジティブウーマンを黙らせるまさかのマジレス。
本人は不本意でしょうが、景時には中間管理職適性がはっきりとあります。ギリギリ無理そうな目標をぽん、と渡されるとちゃんと一生懸命がんばって達成させちゃうからです。頼朝さんマジ慧眼。
悲しいことに中間管理職なので、命令された大目標からのブレークダウンは上手なのですが大目標そのものをつくるのは苦手。というかたぶんそれをするべき、していいという発想が薄い。

 

景時の上司は誰か?

さて、中間管理職ということは上司がいるわけですが、景時の上司は頼朝ひとりだけなのだなと感じるシーンがいくつもあります。
荼枳尼天が取りついている政子は複数のシナリオで、魂の捕食を優先させて源氏軍の不利益になる行動を起こします。頼朝が一貫して源氏政権の樹立と脅威となる勢力の排除を目的としているのとは対照的です。(一部のシナリオでは政子の好き勝手を黙認していますが、政子の戦力を鑑みるときちんと機嫌をとる利益があるためではないかと)
政子の勝手な行動がもっとも目立つのは平泉編で、景時はいくどとなく政子の指示が被害を無駄に増やしていること、頼朝の利益に反する可能性があることを諫言しています。そして一線を超えてしまった景時ルートでは、景時は異様なほどの確信をもって、「あなた(政子)の行動は頼朝さまの目的に反している」と発言し政子に銃口を向けるのです。
銃口を向けたタイミングは主人公のピンチでしたのでもちろん主人公を守りたいという気持ちもあったのでしょうが、わりと「頼朝さまの兵を無駄に使ってんじゃねえよ」という怒りも感じました。いやまあ、自分が身をすり減らして頑張ってるのをバカ女に邪魔されたら腹立つよね、わかるよ。平泉の政子マジで邪魔だからね。

遙か3では頼朝の本心が完全には開かされないまま終わるので、頼朝が荼枳尼天をどう思っていたのかがいまいち不明瞭なのですが、少なくとも殺されて我を失うほどの存在ではなかったんだろうと思います。出なければ政子ラスボスのルートで頼朝があっさり引き下がる理屈が立たないので。

で、何度も言いますが景時は主君の顔色読むの得意マンですから頼朝が荼枳尼天にかける熱量がさほどでもないということはわかってたんじゃねえかなと。そして荼枳尼天の戦力が無くても源氏が大丈夫だってこともわかってたんでしょう。だからこそ景時のルートはどちらも荼枳尼天がラスボス(=景時が荼枳尼天を殺すことを決意する)になりえたのです。

 

明らかに主人公より縁が深い

景時の中間管理職性をお話しする最後として、和歌をひとつご紹介しましょう。
遙か3では個別ルートに入るときに、各キャラを象徴する実在の和歌が表示されます。たとえば譲なら「かぎりとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり」=死に別れは悲しいから生きたい、みたいな歌です。
では景時ルートの和歌はどんなのかというと……
はいドン。

我が君の 手向けの駒を 引き連れて 行く末遠き しるしあらはせ


これは史実の梶原景時源頼朝の使いとして住吉神社に馬を献上したときに詠んだ歌です。
意味としては「我が主君、頼朝さまの馬を奉納させていただきますので末永くよろしくお願いしますゲンジバンザイ」です。
……あんまりこの表現使わないんだけど言っていい?しんどい。

 

その他好きなところ

・髪をおろしてるとセクシー

私は景時の外見けっこう好きなのですが、人によってはデコだしを受け付けないそうで。
そんな人にも寝起きイベントで見られる景時はぐっとくるはずです!というか景時は明るく振る舞ってるか真顔になってるかの立絵ばかりで、完全に気が抜けてる絵が少ないからその点でも貴重だよ!てゆーかマジセクシーだよねあのスチル!井上さんがいかにも寝起きっぽいかすれ声を当ててくれててドキドキするよ!
ちなみに私が結婚したい結婚したいと騒いでいるのは、景時の嫁になったら毎日あのスチルが見れるからっていう理由だよ!

 

傷つく人は少ないほうがいいという一貫したスタンス

景時が「戦わずして勝つ」戦を好む理由の一つに、傷つく人間をできるだけ少なくしたいという考えがあります。その思いは景時以外のルートでよりわかりやすくあらわれます。
とくにはっきりと出るのは白龍ルート。主人公が白龍への思いを深めすぎないようにどうにかやんわり収めたいな~、妹の二の舞はつらいからね、という動機からのもにょもにょとしつつも温かい思いやりを見せてくれます。周りが見えすぎているせいで覚悟決まらないと人に強く出られないのは短所でもありますが私はそんな景時が好きです。

 

喜んでる立絵がかわいい

両手をぐってして目をぎゅっとして喜んでるのめっちゃ可愛い。君には笑っていてほしい。平泉ルートに入ると二度と彼の笑顔が見られないのがさみしいです

 

憂い顔の立絵が格好いい

前髪に手を当てて虚空を見つめるあの立絵好き。頼朝はあの顔を見るために召し抱えたんじゃないだろうか(腐女子並感

 

主景前提の頼景が読みたい(左右はどちらもこれで合ってます)

 


えー、とりあえず以上です!運命の迷宮はいまのところプレイ予定がないので我が愛しの軍奉行についてはひとまずこれを区切りとしたいと思います。
7,000字にわたる益体もない萌え語りにお付き合いいただきありがとうございました!


……あー、ほんと好き。

 


余談

景時CVの井上和彦さん、いまおそ松さんで松蔵役やってるから温度差で風邪ひきそう。
あと遙か6やりはじめたんだけどダリウスが鈴村健一さんだからイヤミと同一人物である事実を脳が拒否する。


余談2

「一緒に逃げてくれ」のひとつ前の選択肢で「死んで英雄になりたかったんですか?」を選ぶと、自分がうまいこと死ぬと英雄として弔われると知った景時が本気で幸せそうに「そっか、英雄かぁ…」ってつぶやくので見たことなかったらご覧ください。あの顔と声で、私は景時がメンタルをおかしくしていると判断しました。彼が楽になりたがっていたのはガチです。

遙かなる時空の中で3感想 好きなルートの好きなところを語るよ

遙かなる時空の中で3」全エンドクリアしたどー!!

PSStoreでセールしてたんで思わず買いました。すごい時間泥棒でした。

女子高生である主人公は、ある日不思議な少年との出会いによって「白龍の神子」に選ばれる。
少年に導かれ時空を越えた先は、源氏と平家が激しい戦を続ける異世界。
そこで主人公は仲間の八葉たちや白龍と協力し怨霊を操る平家と戦うことになる。
ともに戦い危機を乗り越えるうちに、深まっていく主人公と彼らの絆。
しかし、やがて戦乱がふたりの仲を引き裂いて、時に彼の命さえ奪っていくことも……。
あるできごとがきっかけで「時空を越える力」を手に入れた主人公は決意する。
過去へとさかのぼり、悲劇の運命を変えて大切な人を助けようと──。
ここから、時空を越える主人公の本当の戦いが始まる。

遙かなる時空の中で3 Ultimate

 


2017年現在となっては珍しくもないのでネタバレしちゃいますが、主人公がタイムリープ能力を手に入れて悲惨な運命を変えていき(運命上書きシステム)、ついでに意中の男を攻略するゲームです。ついでにと言ったのは主人公がフィジカルメンタルともに強すぎて、誇張抜きで世界をひとりで救ってる感があったからです。お前がヒーローだ。
ちなみに主人公の名前設定画面で、立絵を見た瞬間に「望美って顔じゃねえな」と思ってしまったため変更しました(失礼)。しばらく悩んでつけた名前は「生島 千歳」。……だいたいあってたよね。私の直感は正しかったと思うよ。

あんまり乙女ゲーやらないので乙女ゲーヒロインってみんなこんなかと思ったら違うんですね。感想ブログを巡回していて気づきました。みんながみんなポジティブ化け物ではないんですね。言われてみれば薄桜鬼の主人公はもうちょっとポジティブ控えめだったな。

遙か3の主人公はプレイした人が口をそろえて「望美さま」と呼んじゃうくらい強くポジティブで強いです。語彙力喪失するくらい強いです。27歳男性の尻を叩いたり32歳男性を叱咤したりできるスーパー女子高生に成長します。
成長しますっていうか、異世界に放り込まれた直後からハイパーポジティブだったのであれは性格なのでしょう。さすが白龍の神子。
「お前が来たとたんに場の気が陽にめっちゃ傾いた」って泰衡が言うのもわかるわ。やはりお前がヒーローだ。

 

いえ、主人公のことをいじるのはこれくらいにしましょう。
そろそろシナリオの話をしよう。
どうしてもこの手のゲームは個別ルートのクオリティにばらつきがあったり、好みで思い入れが左右されたりするのでレビュー的な評価はしません。
私が非常に良かったなと思ったシーンをいくつか挙げたいと思います。
ネタバレだらけだよー。プレイするか迷っている人はここで帰ろう!!

 

ちなみに明日(2017/10/25)までセール価格¥5,500でした!
遙かなる時空の中で3 Ultimate -プレイステーションストア

 

 


1.有川譲 恋愛ルート

f:id:harimarin:20171024202025j:plain

 

現代からつれてこられちゃった幼馴染の弟のほう。基本的にずっといてくれるので愛着がわき、あと「こいつすごい死にたがり感がある。救わねば(使命感)」みたいなかんじで最初に攻略しました。
恋愛対象としてはさして好きでも嫌いでもないですが、彼のシナリオは大好きです。

譲ルート終盤、彼は主人公への狙撃をかばって死亡します。かばうことができたのは譲が「主人公が狙撃されて死ぬ」予知夢を見ていたから。彼は主人公を守ることができたことに満足し、しかし死にたくないと呟きながら事切れます。
その後、主人公は常のハイパーポジティブさが嘘のように消沈。ほとんど乱心の域に達します。
遙か3主人公は迷ったり悩んだりこそすれ落ち込むということが全ルートを通して非常にすくない娘です。攻略キャラ(好きな男)が死んでも「この運命を書き換える……!」って即行立ち上がります。しかし譲ルートに限っては立ち直りがとても遅かった。

もちろん理由があります。
譲が主人公が死ぬ予知夢を見るのは共通ルートから描写されているのですが、ほとんどのルートで予知夢は現実になりません。予知夢通りに狙撃が行われるのは、譲ルートのみです。

ここで遙か3のシステムを説明しましょう。
各攻略対象には「絆の関」と呼ばれるフラグが複数設定されており、ルート分岐タイミングまでに絆の関をすべてクリアしているとルートに入れる仕様になっています。各キャラの絆の関クリア方法やクリア状況は情報メニューでメタ的に確認でき、情報メニューとにらめっこしながら何度も何度も同じ時間をやり直して運命を上書きしていくのが遙か3です。

そうやって、恣意的に自分の望むルートへと運命を導いた先に、予知夢の成就……主人公をかばって譲が死ぬ運命があったわけです。
主人公が「私が譲くんをこの運命に連れてきてしまった……!」と慟哭したとき、プレイヤーのハリハリも「ほんとだ……!私のせいだ……!」と頭を抱えました。遙か3プレイ中、最高に主人公とプレイヤーがシンクロした瞬間でした。
前述のとおり譲は最初に攻略したキャラクターなので、システム把握ができておらず試行錯誤の回数は全キャラ中ぶっちぎり。その試行錯誤がぜんぶ譲を殺してしまう前準備だったとなるとすごい罪悪感でした。
ゲームシステムに感情をぶっ刺されたかたちです。主人公を通してプレイヤーも串刺しみたいな。

まあ乙女ゲーなので最後にはちゃんとハッピーエンドになるんですけど、ものすごく気がひきしまるルートでしたね。「運命を軽々しく書き換えてはいけない」という製作者の意志、しかと受け取ったぞ!みたいな。
そう思ってたら他のルートではけっこう軽々しく書き換えてたので、ぜんぜんそういうことじゃなかったわけですが。


2.敦盛 恋愛ルート

f:id:harimarin:20171024202034j:plain



伏線の仕込みかたと、バッドエンドの質が非常に美しかったルート。
「あの怨霊お前だったのか!」という驚きは気持ちよかったですね。そして怨霊に成り果てた愛しい人を倒し、正常な気の流れに返してあげるバッドエンド美しいよね。弓がしなり弾けた炎ってかんじだね。主人公は刀剣つかいだけど。(恋射ちの敦盛MAD、ニコ動に転がってそうだな)

経正と敦盛が陣をへだてて合奏するシーンは「すごい平家物語にありそう……!」とめちゃめちゃ興奮しました。もののあはれ極まってた。大好き。

私はあまり歴史詳しくないのですが、歴史好きの人が素敵な題材を素敵に乙女ゲーとして料理してくれているゲームだなあと随所に感じられるのが遙か3のいいところ。(遙かシリーズはまだ3しかやってないのでシリーズ全体の長所かはわかりませんが)


ところで経正さん好きなんですけど攻略ルートDLC化はいつですか。

 


3.リズヴァーン 十六夜ルート(バッドエンド)

f:id:harimarin:20171024202038j:plain



このバッドエンドをあのポジティブ主人公から引き出したのはすごいと思う。

リズヴァーンは鬼の一族という遙か世界で忌み嫌われている存在。そのため主人公と自分が結ばれるなど絶対あってはならないと確信しています。
八葉(神子の守護者)としての一線を超えず、常に「神子の決断に従おう」と主体性を促し、そしてついに合戦が終結すると「戦は終わった。もう一緒にいる理由はない。幸せになれ。二度と会わないほうが良い」みたいなことを言いながら去ってゆく自己犠牲の人。

他ルートならそれでいいんですが、いざリズヴァーンが攻略対象になると主人公はまあ傷つくし困惑するわけですよ。
それで生まれちゃったのが十六夜バッドエンド。

「戦が終わったせいで彼と会えなくなるなら、私が戦を起こせばいい」とサイコパステストばりの論理をもって、自ら手勢を集めて源氏相手に戦争を起こします。
その様を見たリズヴァーン、懊悩するも「神子の決断に従おう」と主人公の隣で刃を構える……という幕引きでした。
「私の責任だからお前を止める」とか言い出したら私の中で彼の評価は地に落ちるところでしたが、自分の言ったことはひるがえさない。かっこいい。でもその割り切りはもっと早く出すべきだった。

年上のたよれる男性が仲間に少ないからか(27歳軍奉行はたよりないポーズが上手)、リズヴァーンルートの主人公はメンタルを崩しやすい印象です。そのなかでもバッキバキに壊れちゃったこのバッドエンドは、主人公とリズの業が見られて好きですね。

 


4.ヒノエ 恋愛ルート

f:id:harimarin:20171024202018j:plain



顔がいい。以上!

……で終わってもいいくらい顔が好みです。はじめて熊野で出会った立絵(横向きのやつ)がもろにハートにきました。ときめきました。
そして性格がまたいいんですよねー。音ゲーかってくらいポンポンテンポよく口説いてくれる。すきあらば口説けるくらい頭が良くて教養もある。本編中で和歌をそらんじる回数が断トツで多い。
弁慶もよく口説いてくれますが、あっちはどこか一歩引いているというか、ひとつ口説くたびに裏に二、三目的がある雰囲気があるのでちょっともやつくんですよね。不愉快というよりは、本心みえなくて気持ち悪いかんじ。
ヒノエはそういう鬱屈は少ない(皆無ではないけど)のがいいです。塩対応されて傷つくことも覚悟の上でまっすぐ口説くのはかっこいい。
言葉だけでなく、「熊野においでよ。幸せにするぜ?錦もサンゴもあふれるくらいやるよ」ってかんじで誠意と権財力を示してくるのもいいです。スパダリです。金と力があることを笠に着るでもなく、引け目にするでもなく、自分の長所としてアピールしてくるの気持ちいい。
攻略キャラにならないルートでも、わりと未練ありそうに主人公を口説いてくるので本気だったんだろうなと思えるのがまたいい。ヒノエだけでなく遙か3は非攻略時のリアクションが各キャラしっかりしていて周回のしがいがありますね。

十六夜ルートだと顕著ですが常に熊野を最優先に動いているのが、芯の強さを示していていいなあと思います。モンゴルルートでひとりだけついてこなかったの好感しかない。主人公と恋愛をはじめてどんなに絆を深めても熊野≧主人公までしかたどりつけないかんじ、好き。
だからってどちらも取れないから現代-異世界の二重生活をはじめるのはさすがに根性ありすぎじゃないだろうか。いや、好きだけど。君のバイタリティ大好きだけど。

そ・し・て!
恋愛ルートのヒノエが最高に素晴らしい。恋愛ルートではヒノエひきいる熊野水軍が源氏方の味方につき、ヒノエが源氏方をひっぱる形でストーリーが進んでいきます。軍事作戦の話をしていたかと思うと糖分過多な文句で口説かれるという不思議な体験ができるルートです。
この段になると、ヒノエが「あえて船団を二手に分ける。どうしてだかわかるかい、姫君?」みたいな感じで作戦の意図を理解できるか問いかけられる会話選択が増えてきます。基本的には3択で、だいたい正解・ボケ・わからないみたいな内訳です。そしてどの選択肢が一番好感度が上がるかというと……正解をズバッと言い当てたときなんですよね。「さすが俺の姫君は賢いね」ってすごい嬉しそうに言ってくれます。

最高では?惚れた女が賢いことを喜んでくれる男って最高では?「ええ~わかんな~い☆」みたいなのは好みじゃないんだねヒノエ、君はいい男だ!!!!
共通ルート時点でも主人公が有能さや勇気を示すと「ぐっとくるね」みたいなこと言ってくれるのでマジで強い女が好みだと思われます。一貫している。
ちなみにヒノエを褒めるときの選択肢は素直に「すごいね」「格好良かったよ」って言えば喜んでくれる。拗れがない。素晴らしい。好き。

 

5.弁慶 恋愛ルート

f:id:harimarin:20171024202021j:plain



ちょいちょい口説いてくれる男その2。そして作中ぶっちぎりの設定過積載。
弁慶ってもちろん武蔵坊弁慶、立往生で有名なあの男です。ガチムチの荒法師です。
しかし遙か3の世界は異世界なので(そして攻略キャラなので)、まずガチムチ属性がパージされました。そして薬師・軍師属性が追加されました。元ヤン属性もあります。柔和な優男で裏がありそうなかんじで女性を絆すのが得意。しかし薙刀はそのまま。

……大丈夫?設定積みすぎてない?コーナー曲がれる??

f:id:harimarin:20171024202954j:plain


まあ実際、安全運転とは言い難いかんじの運用でしたがそこは老舗乙女ゲーメーカー。うまくまとめておりました。

弁慶は恋愛ルートでろくに恋愛できないキャラのひとりです。自分のやりたいことと、過去にやらかしたことのケツをふくので精一杯で恋愛どころではないからです。個別ルート入ったあとの甘い言葉、「君はいけない人だ」くらいじゃないか?(ちなみに弁慶が発する「いけない人」はたいてい「これ以上踏み込むと命の保証ができないぞ」というやんわりとした脅しで、個別ルートでの「いけない人」は「踏み込みすぎたから君には死んでもらうしかなくなった」の意味です。本心はまた別として)

龍脈つぶしたって話が明かされたときはびっくりしたよね。元凶お前かよ!!(遙か3は龍脈が汚されたせいで戦がぐちゃぐちゃになり、主人公ももとの世界に戻れないという舞台設定になっております)

やらかしまくりな弁慶ですが、ラストが超好みでした。
いろいろあってどうにか事態が収束し、龍脈も正常化して主人公は元の世界に帰れるようになった。その彼女へまっすぐにおもむろに「どうか帰らないでくれ」と頼む弁慶。その後のセリフがふるってまして。

君が元の世界に帰るために
どれだけ頑張ったか知っていて
こんなことを願う僕はやはり咎人なのでしょうね
どんな手段を使って、
君を返さないようにしようかと……
今もそんなはかりごとをめぐらせてしまう
でも、こればかりは君に乞うしかない
僕は、君が好きです
どうか、僕とともにいてくれませんか

もうVita持ちながらゲラゲラ笑いましたし、ときめきましたよね。
私、賢いキャラがプライド捨てて土下座してくる状況大好きです。切羽詰まってなきゃ搦め手使う気まんまんなの最高だし、その余裕がないから頼み込んでくるのかわいい。実際あの状況だと無策が唯一ベターな手だったしね、君はかしこいね。おとりにした女に「好きだ。帰らないでくれ」って言える面の皮の厚さが好きだよ。

ああ、それと弁慶は唯一、主人公の成長を悲しんでくれたのも好きですね。「刀も握ったことのない子がこんなに強くなってしまったのは、僕らが犠牲を強いたことに他ならない」みたいなことを言ってくれました。私(プレイヤー)もはっとしましたよね。たしかにそうだわ、ただのポジティブな女子高生が大の男を切り伏せるのは異常事態で、本来あるべき姿かといえばそうじゃない。
こういう点に言及できるのが、遙か3弁慶の魅力だなあと思います。ヒノエが主人公の強さを無邪気に賞賛するのにたいし、その背景を思って悲しんでくれるのは愛情ですね。


6.梶原景時

f:id:harimarin:20171024202031j:plain

好き。
好きすぎて語り過ぎそうな気がするので、別の記事で書きます。
推しです。

 

 (2017/10/25追記)書きました。



余談

いま調べたら遙か3、舞台化するんですね。ちょっと気になるかも。

natalie.mu

意識高いと言われるのが怖かった ~ヨガツイートに関する葛藤~

どーも、朝活が楽しくなりすぎた結果かるい過労(+季節の変わり目による体への負担)でダウンしましたハリハリです。


それでもなんだかんだ朝ヨガ朝活は続いています。
午前中のパフォーマンスが上がる(副次的に過労になりやすいので注意)のと、細々した雑事をまとめて片づけられて達成感が味わえるのはやっぱり良い。
最近30分の朝活にしてみたんですが、私にとってはちょっと長いみたいですね。20分が集中して区切れる時間のようです。

 

f:id:harimarin:20170825203618j:plain


さて、このエントリでヨガに関する記事をあげるのは3記事目か4記事目だと思います。
書くからには読んでほしいという気持ちがあるのでTwitterに通知を入れるじゃないですか。そのたびになんかチリッとする不快感を感じていたんですよね。
なんだべな~と考えて、やっと正体がつかめました。

 

「意識高いwww」って思われるのが怖い。

 

私のTwitterアカウントはアイコンとプロフで一目瞭然のオタクアカであり、つぶやいている内容もだいたいそんなかんじです。リアルで知っていて相互フォローしている友人もごく少数の例外を除いてみんなオタクです。ハリハリがオタクがオタク語りをするためのアカウントです。ミュージカルを観た直後が死ぬほどうるさいミュオタのアカウントです。
わりとフェミニズム関連とかにも言及しちゃうときがある程度に、あんまりウケを気にせずつぶやいています。

 

それなのに、なぜかヨガのことを話すときにものすごく抵抗感があったんです。
「意識高い発言ウザい」って、友人たちに思われるんじゃないかと怖かったから。冷めた視線を送られることを無意識に想像して、知らないうちに緊張していました。


……で、ここから「マジョリティ集団から排除されてきたオタクコミュニティがもつ排他性」みたいな話をしてもいいのですが、私は基本的に自分の身一つでどうこうできない話をするのは好きではありません。
私を「意識高いwww」と笑う人や、そう思わせる空気みたいなものを殴れば被害者ぶれるかもしれないし気は晴れるでしょうがそれって根本的な解決にはなりませんよね、なのです。
そもそも実際にクソリプなどの実害があったわけでもないので、現状はただ私が怖がっているだけ。


じゃあなぜ怖いのか。
他人の目が怖い?それならとっくの昔にオタクやめてるだろって話です。私はほぼ物心ついたときにミュオタになってしまい方向転換をせずに今日まで生きてきたオタクです。いろいろと葛藤はありましたが、自分の感性と知性を裏切るとろくなことになんねえと思い知ったので開き直ってオタクをやっています。
ハリハリは自分の感性と知性を信じるという方針で生きている。だからフェミ系の話もメインアカウントでできる。それなのになぜ、ヨガの話には抵抗感があるのか。
ヨガが好きだ、楽しいという感覚が本当に自分のものであるという確信がないから、という仮説はどうでしょう。「意識が高いw」状態なのではないかと自分で自分を疑っているから怖いのではないか。
逆に言えば、自分への疑いが晴れればこの不快感は晴れると考えていいでしょう。フォロワーや読者がどう思うかは向こうの勝手です(ドライモンスター)。


ではハリハリの言動のどのあたりが意識高い系と類似するのかを見ていくと、これは明白。この2か月という短期間でヨガ関連の記事を何本も上げていること。

朝ヨガってやつをはじめました。
ねじってねじってお腹をへらす
ヨガは成長を求めないのかもしれない

毎日更新のブログならともかく、週一以下ベースのブログとしては明確に多いです。Twitterにも同様に「ヨガ行ってきた」旨のツイートをしており、意識高い系の承認欲求やマウンティング行動を想起させます。


しかし、それは実情と合っているのか?
ハリハリがヨガについて語るのはアピールでありマウンティングである、とするとやはり違和感が否めません。
なぜならヨガに言及しているのがこのブログでありオタクTwitterアカウントだからです。アイコンが瀬戸健太郎だからです。


これがもしもFacebookで「ヨガ行ってきました!」だったり、丁寧な暮らしを指向している風なブログでのアピールだったのなら意識高いマウンティングである傍証になったでしょう。しかしオタクコミュニティにおいてヨガしてますアピールはどちらかというと悪手です。地位向上が目的だったならむしろ隠すか、別のプラットフォームでやるべき話です。こんな風にわざわざ考えるまでもなく明らかなこと。
むしろ自分のカーストを下げるかもしれないとわかっていて、ハリハリはヨガについてのエントリを書きTwitterに投稿した。自分のオタク語り用のプラットフォームで。なぜか。

なぜなら。


ハリハリはヨガ沼にはまっているから。
ヨガがハリハリの旬ジャンルだから。

 

意識が高くなったんじゃなく、意識高いアピールをしてるんでもなく「ジャンル:ヨガ」にハマっただけだった。これが真相。出そろっている状況と一切矛盾しない結論はこれだけです。
観てきたミュージカルについて言葉を尽くして語るのと同じテンションで、ヨガについて自分の思うところを語っていたわけです。沼ったらとりあえず放送日(レッスン直後)はうるさくなるだろ。そういうことだよ。
アカウントを分けるなんてことはしたくない。ミュージカルも黒バスも松もユーリも雑多に語るオタクアカウントでヨガについて語っちゃいけない道理はありません。アカ分け面倒だし、思考の流れが切れるのもったいないじゃないですか。

……よかった。私は私だった。

つまるところ私が@harimarinアカウントですでにミュージカル感想と腐妄想と通常感想と日常ツイを全部ぶちこんでいる以上、そこにヨガがジャンルとして新たに加わることは軸のぶれにはあたらない。もちろんマウンティングなんかじゃないしカースト向上のためのアピールでもない。
「意識高いw」と揶揄される謂れはまったくないですね。なんか言われたら笑顔で中指を立て、「人の趣味に文句つけんな」と申し上げることにいたしましょう。

上でも言いましたが、私は私の感性と知性を信じることにしています。きっちり理論が立ったので、もうこの件についてはよっぽどの反証が出てこないかぎり迷いません。無罪です。ヨガはいいぞ。

 

 


余談

このエントリではカースト向上のためのアピールやマウンティングは悪いこと・恥ずかしいこととして扱っていますが、必ずしもそうじゃないことは理解しています。
……が、「マニア」的な意味でのオタクが外側の目を気にしてアピールに腐心しはじめたらそれはオタクとしての自殺だし、最初からその意図でオタクコンテンツを愛好するならやっぱりオタクとは性向が違う人々なのではと感じます。なんていうか、SNSがあっても簡単にはつながれないからオタクなのだし、だからこそ同好の士が尊いのだし、自由な世の中と出会いの場(イベントやSNS)がありがたいわけで。

 

余談2

攻に肩を抱かれながらカメラ目線で舌をだし中指を立てて「人の趣味に文句つけんな」って哂う花宮真が浮かんだんですが超かわいくないですか。攻は瀬戸だと最高ですがわりと誰でも素敵だと思います。誰かイラストにして……。

 

映画「ドリーム」感想とか考えたこととか

映画「ドリーム」見てきました。

 

f:id:harimarin:20171010215858j:plain

映画『ドリーム』オフィシャルサイト - 20世紀フォックス

1962年に米国人として初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンの功績を影で支えた、NASAの3人の黒人系女性スタッフ、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ボーン、メアリー・ジャクソンの知られざる物語を描いたドラマ。ソ連とアメリカの宇宙開発競争が繰り広げられていた61年、米バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所に、ロケットの打ち上げに必要不可欠な計算を行う黒人女性グループがいた。なかでも天才的な数学の才能をもつキャサリンは、宇宙特別研究本部の計算係に抜てきされるが、白人男性ばかりのオフィス環境は、キャサリンにとって決して心地よいものではなかった。一方、ドロシーとメアリーもそれぞれ、黒人であるというだけで理不尽な境遇に立たされるが、それでも3人はひたむきに夢を追い続け、やがてNASAの歴史的な偉業に携わることとなる。

ドリーム : 作品情報 - 映画.com

 


良い映画でした。面白かったです。そして、うまいこと一言で「こういう映画でした!」って言えないかんじです。
巷では「才能ある女性たちの痛快な云々~」と喧伝されてますがそういう映画かって考えるとちょっと首をかしげる
素晴らしいところや考えることはいっぱいあったので、とくに構成せずに書き散らしていきたいと思います(いつもそうじゃねーか)。ネタバレあります!
感想というよりは、見て考えたことの羅列です。

 

誰も差別解消になんて興味ない

この映画がとても正直だなと感じたのは、白人キャラのほとんどは差別解消に興味をもっていないという点です。

キャサリンの上司ハリソンは彼女の才能を認め、不便な状況の解決に積極的に動きはしましたが、彼はキャサリンの能力をフルに使いたかっただけであって黒人女性差別をなくしたいわけではありません。キャサリンに与えたありとあらゆる例外は、ソ連に先を越されて自分の進退と夢とアメリカの安全が危ねえという焦燥感がもたらしたものです。キャサリンの頭脳を一分一秒でも絞り切りたかっただけです。心は月に行ってる、なんて言っちゃうようなロマンチストではありますので、トイレ問題について聞いたときいよいよ心底情けない気分になったというのもあるでしょうが。
自らハンマーを振るって「非白人トイレ」の看板をぶっ壊したのはスカッとするシーンですが、そんだけケツに火がついてたということでしょう。少なくともIBMよりはキャサリンをあの時点で貴重だと感じてたのは間違いないようですが。
計算係が不要になって担当を外さざるを得なくなったのが残念なのは本音でしょうが、あれも彼女の能力を手元に置いておきたかったのが一番大きいんじゃないかなあ。NASAの職務規約上、たぶん何かに引っかかって遺留できなかったんでしょう。(おそらく秘書が残留方法を調べさせられ、結局手立てがなかったと思われる。だから秘書がちょっと好意的だったのです)

ケツに火が付いた結果、キャサリンの才能を明確に認めざるを得なくなった人物はもう一人います。
マーキュリー6号のパイロット、ジョン・グレン。搭乗時から黒人女性たちにも握手をしてあげるなど、いかにも偏見がなさそうなキャラとして登場した彼です。会議に参加するキャサリンにも嫌な顔一つ見せず(他のパイロットは多かれ少なかれ渋面を作っていた)、数字を導き出すたびに「いいね!」ボタンをおしてくれる。……でも、それだけだったと感じます。
記者会見のシーンで顕著なように、彼はひょうきん者で場の空気(あのタイミングでは、ソ連に宇宙開発競争で負けて最終的にミサイルとか撃たれるかもという恐怖)を明るくすることを旨としている節があります。だから、黒人女性が来るというイレギュラーがあっても会議を明るくやりたかった。だから、いいねボタンを押す。
しかし、いいねボタンの対象は常にキャサリンが導いた「数字」であってキャサリン本人ではありませんでした。そこがジョン・グレンの限界で、バランス感覚でした。本当に偏見がなく、差別を解消しようという気があるのなら「彼女はすごいね」と言わなければならないのです。けれどそれをやってしまうとNASAや政府のお偉方ににらまれてパイロットの順番を後回しにされるリスクがある。だから代わりに数字を褒める。……というのを無意識にやってたという描写だと私は感じました。
そんなグレンが最終的に名指しで(まあ名前は覚えてなくて「that girl」って言ってたけど)キャサリンを認めるに至ったのは、やっぱりケツに火がついていたからです。ケツに火っていうかロケット点火前っていうか。まあ要するに「数字が間違ってたら俺は死ぬ」という状況に至ってなりふり構っていられなくなったわけですね。

ハリソンとジョン・グレン、それぞれキャサリンを認めたのはまさにケツに火がついていたからだと私は思っています。ハリソンは自分のキャリアと夢が、ジョン・グレンは直球で生死が、キャサリンの頭脳にかかっていました。そういう状況下であれば肌が白かろうが黒かろうがペニスがついていようがいまいが関係ねえ!!ってなるのはまあ当然です。でも、これだけなら、溺れる者が藁をつかんだだけ。
ふたりとも黒人差別にも女性差別にも興味はなかった。でも、それを放っておくと自分が落とし穴にはまることを思い知った。ならば、これからどうする?って考えられるかどうかが、まさに人間性と知性を問われるところなわけで。
ハリソンはポールに「天才を導かなあかんぞ(こっちまで来れなさそうなら道をつくるんやぞ)」と言い含め、ジョン・グレンは地球に帰ってきてからも「彼女にお礼を」と通信を入れました。
痛い目を見たのに過ちを放置するのは馬鹿のすることですからね。

 

差別を解消しようとすることは、誰かを不快にさせること

この映画は差別を解消するための行動が誰かを不快にするというのをはっきりと描いているのが素晴らしいと思っています。
ドロシーとミッチェルのやりとりに顕著ですが、たとえば正当な昇格・昇給を求めたり、教育の手段を求めたり、いっしょのコーヒーサーバーを使おうとしたりすると白人が眉をひそめる。場合によっては、同じ黒人の家族にも不快感を表明される。

まあ、そりゃそうなんですよ。昨日まで汚いもの扱いしてた人が同じ水飲み場使ったら嫌だし、自分が関係ないルール改定のために書類をつくるの面倒だし、規則つくったの自分じゃないのに詰められるし、「理不尽だ!波風立てやがって!」って感じるのはそりゃそうだよねって話で。
基本的に差別してる側ってその意識がないので、被差別者が平等な扱いを求め始めたら「面倒くせえな、わがまま言うんじゃねえよ」ってなるの当然なんですよ。もしくは「私悪いことしてないのに怒ってる…怖い…」みたいな被害者意識になるか。客観的にとらえなおして「あ、ごめん。直すわ」って言えるのはかなりの知性とモラルを備えてないと無理。たぶん全人類の8%くらいしかできない。
だからもう、差別解消するなら誰かを不快にすることは避けられない、くらいに思っておいたほうがいいのだろうなと改めて感じました。目の前の人を不快にしてでも、貫きたい正しさや欲求があるなら仕方ない。一回乗り越えたら次の世代は双方楽になるし。

……ここまで考えて、差別解消と日本人的倫理観の相性の悪さに絶望を覚えましたよね。日本の道徳でいう「和」とか「他人に迷惑をかけない」とかって周りの人を不快にさせないことが要件に入ってるから……。そして和は公正さよりも日本では優先されるから……。うっわあ。

 

勲章よりも人間扱いを

子どもの誕生パーティで、ジムがキャサリンに「謝らせてほしい」と言ってからの一連のシーンが大変好きです。
ジムが何を言ってもキャサリンが「uh huh」って塩対応し続けるのが面白くてですね。キャサリンがすぐにネタばらしをしてるんですが、ジムは謝らせてほしいという口実でキャサリンをダンスに誘ったのにsorryって言わずに口説き始めたんですよ。それは順番が違うだろ、っていう「uh huh」です。
この映画、白人が黒人にニグロって言ったりcoloredって言うシーンはほぼないんですが、「女なのに」「男じゃないから」って言葉はみんなホイホイ使うんですよね。男女差別はまだぜんぜんオッケーだったことがうかがえます。
(わかりやすいのはメアリーが技術職への申請をミッチェルから断られるシーン。ミッチェルが最初に言う理由は「技術職は男だけ」でした。学識要件を満たしていないというまっとうな理由があるのに、それを言わずに「女だから」で通ると認識しているわけですね)
話を戻しますと、キャサリンの「uh huh」は「私を口説く(女扱いする)前に、謝る(対等な人間扱いをする)のが先でしょ」という意味です。だからちゃんと謝ったらちゃんと口説かれる。

黒人女性を対等な人間扱いしてないシーンはこの映画には山ほどありますが、一番笑ったのはキャサリンに検算を頼むため、データを持ってサムが西館へダッシュするシーン。
電話ねえのかよ、って思ったよね。
史実のNASAではどうだったかわかりませんが、あの映画内での非白人計算室には電話が通ってないのはほぼ確実。なんで通してないんだよめっちゃ不便だろって話なんですが、要するに言葉を話せる家畜扱いから黒人が脱してないってことですよね。そのせいで白人男性が半マイルを往復ダッシュするはめになるわけですが。(電話があればキャサリンがダッシュするだけで済んだ)
同じ敷地内にいる人を平等に対等な人間扱いしないと痛い目を見るよ、という教訓がここにも表れています。

象徴的なのはラストシーン。キャサリンと対立し続けたポールが、残業をしている彼女にコーヒーを手渡す。本当になんてことがない親切なのに、ここに至るまですごい葛藤があったことを観客は知っているわけで。
いっしょに観に行った友人が「なんでラストカットがキャサリンの名前がついた研究所(Katherine G. Johnson Computational Research Facility)の看板じゃないんだ?」と言っていましたが、その理由は明白。勲章をもらうより、自分の名前がついた研究所を作ってもらうより、同僚がみんな対等に扱われる世界をつくって維持するほうが難しいからです。


資本主義の前提としての差別解消

今なお差別はバリバリ残っているものの、50年前まで分離政策を維持していた州がある中でよくアメリカここまで頑張ってきたなというのを感じた映画でした。
しかし考えてみれば差別解消って資本主義の大前提みたいなところありますし、当然と言えば当然なのかもしれません。(ちゃんとそういうところに目を配ったり勉強した方には自明でしょうし、ちょっと今更気づいたの恥ずかしくはあるのですが)

資本主義というのは要するに競争原理をもとに社会を回していこうぜ!という考え方です。みんなが競争してよりよいものをつくったり高い能力を身につけたりして社会に貢献し、貢献度の高い人が金銭というかたちでより多く報われる。それが資本主義のざっくりしたルールです。(他にもいろいろありますが今回はここが大事)
重要なのは競争が適正に行われること。要するに、みんなが本気を出せるルールであることです。さらに、参加者が多ければ多いほど良い。たくさんの人が参加するほど、ピラミッドの頂点は高くなるのです。
もしもルールが一部の人(たとえば白人男性)だけに有利だったら、優遇された人はさぼりますし不利な人はやる気をなくします。人種や性別によって教育機会やキャリアアップではじかれれれば参加者が減り、必然的に競争はぬるくなってしまいます。社会が向上していきません。放っておくと資本主義の根本がシロアリに食い荒らされたごとくぼろっぼろになります。
だから差別解消は常に推進されなければいけません。スポーツがルールの公正な運用を前提としているように、資本主義は漸進的に差別がなくなっていくことを前提に存在しています。
言いきっちゃいますが、差別主義者は資本主義の敵です。別の主義をつくってそっちでやってくれって感じです。

 

 

「私のためのトイレがない」人は今日も隣にいる

中盤でキャサリンが「半マイル先にしか私が使えるトイレがない!」とキレるシーンは印象的です。
被災地などで真っ先に問題になるように、排泄がちゃんとできるかどうかは人間のストレス度に直結します。災害ならばまだ我慢と諦めもつきますが、これが日常なのはたまったもんじゃない。
しかし恐ろしいことに、職場でトイレを使えない人はまだまだ一定数いるのです。この日本にも。

パッと浮かぶのは身体障害者でしょう。多目的トイレがない職場では物理的に働けない。わかりやすいですね。
わかりづらい人たちもいます。たとえばトランスジェンダー性自認と逆のトイレに入らされるストレスはかなりのものらしく(私は経験がないので想像しかできないですが)、自宅外でトイレが使えない方は多いそうです。かといってカミングアウトしていないなら多目的トイレも使いづらい。……トイレはあるけど使えるトイレが、ない。

映画を観ている最中も心配だったのですが、体が女性の場合は月一で生理がくるんですよ。トイレに行かなきゃならない頻度があがるんですよ。当時のアメリカですでに働く女性はタンポン派が多かったようなのでキャサリンもそうだと仮定しますともう一つ怖いことがありましてね。トキシック・ショック症候群という、要はタンポンを適切な時間内に取り換えないと最悪死ぬっていうやつなんですが。慢性的に長時間勤務だと怖いなーと思いながら見てました。

まあ、何が言いたいかっていうとトイレがちゃんと使えないってのはかなり人権が危ういってことと、キャサリン状態の人が隣の席に座ってるかもしれないってことです。

 

 

 

……ざっと思いつくのはこれくらいでしょうか。
異様に上映館が少ないですが本当にいい映画なので、万が一観てなくてここまで読んじゃった方はぜひシアターへ!

 

 


余談

NASAの会議室や偉い人のオフィスにケネディの顔写真が掲げられてるカットが映るたびに「すごい!全体主義国家みたい!」と思った。

世界は進歩している~ミュージカル「パジャマゲーム」感想~

!注意!
ふつうの感想エントリではありません!
北翔さん美しかった!とか新納さん格好良かった!みたいなことはあんまり書いていません。お二人とも素敵でしたがお二人が素敵だったことは他のブログがほめたたえているはずなので私は別の話をします。
ネタバレもあります。ネタバレしかないレベルです。

 

 

f:id:harimarin:20171004215701p:plain

 

10/1(日)マチネ パジャマゲームを観劇してきました。

時は1954年。周囲の工場が次々と給料アップを果たす中、スリープタイト社のパジャマ工場でも労働組合が立ち上がっていた。

組合の中心はベイブ・ウィリアムス(北翔海莉)と組合委員長プレッツ(上口耕平)。彼女達は時給7セント半の賃上げを求め、奮闘する毎日を送っている。
そんな中、社長ハスラー(佐山陽規)が雇った新工場長のシド・ソローキン(新納慎也)は若くてハンサム。女子社員の間では、お昼休みも右腕チャーリー(広瀬友祐)を連れて一生懸命働く彼の噂で持ちきりだった。
工場のタイムキーパー ハインズ(栗原英雄)は「もしや自分の恋人も…」と社長秘書である恋人グラディス(大塚千弘)の事が気がかりでしょうがない。シドの秘書メイベル(阿知波悟美)はそんなハインズを優しく諭し、新工場長は上手くやっていけるかと思えたのだが、反抗的な従業員との間でトラブル発生!駆けつけた労働組合と工場長、相対する立場のベイブとシドが運命的に出会う。

一目見た瞬間から惹かれあう二人だが、ベイブは自分の立場を優先するあまり、彼の誘いにつれない素振りをしてしまうのだった…。

http:// http://pajama-game.jp/about/

 

 

 

最初期のトニー賞受賞作ということで、わくわくしながら劇場へ。
ミュージカル・コメディと打ち出されたとおり明るくハッピーな作品でした。古き良きミュージカルソング、というかんじのナンバーが多くて多幸感やばい。
とくにピクニックのシーンは鍛え上げられた肉体で繰り出されるポップな外遊びダンスがとってもかわいかったです。1954年当時モデルのサマードレスがひらひらするの素敵だし、オーバーオール男子たちが頑張ってるのキュンキュンきます。

 

それと同時に、素に戻ってしまうシーンがたくさんあったこともまた正直なところでした。

役者さんたちのせいではありません。みなさん非常に見事に演じていました。
スタッフ・キャストの技量のせいではなく「えっ?」となってしまうのは、脚本のせいです。この作品が1954年当時に1954年当時の世相を1954年当時の観客に向けて作られたせいで、2017年の我々にジェネレーション・ギャップを生んでしまったのです。
たとえるなら自分の父親が「俺たちの時代は徹夜なんてしょっちゅうだったのに最近の若者は……」と悪気なく言うのを聞いてしまった気分。
不可避の事態だったと感じます。
(でも演出のトム・ザザーランドはその辺把握して演出つけたんじゃねえかなという疑惑が個人的にはあります。グランドホテルでの所業を私は忘れていないぞ(褒めてます))

 


具体的にあげていきましょう。
さきほども話題にしたピクニックシーン。歌に入ってからはハッピー&ハッピーなのでいいのですが、問題はその前。

あらすじにも登場している労働組合委員長プレッツが、いわゆるヤリチンであることが発覚します。彼氏持ちの女にアプローチをかけたかと思えば、その女に振られると別の女の子を二人きりで森の中を散歩しようと誘います。
しばらくするとプレッツに誘われた女の子が「あんたの散歩ってのは押し倒すって意味なのね!」と叫びながら逃げ戻り、プレッツが後を追いかけてくる。同僚の女性たちは女の子をかばい、男性陣も若干非難めいた反応。
でも、それだけ。
プレッツは排斥されることなくピクニックに参加し続けます。

おいおいマジかよ!?って思うじゃないですか。
強姦未遂は微妙としてもセクハラの相当重度なやつであることは21世紀人であれば合意できるでしょう。
でもプレッツは作中で報いを受けないんです。
てゆーか人気者なんですよ。組合の委員長任されてるくらいだから信用あるし、ピクニックも幹事やってるし。友達たくさんいそうだし。なぜかピクニックの最後で年増に食われるし。
ちなみにプレッツは既婚者です……。

もうこの時点で「正義がない……この組合には正義がない……。だめだ賃上げ交渉を心から応援できない。工場長を非難する前に組合委員長のリボルバーを切り落とすのが先だよ……」みたいな気持ちで観るしかなくなるじゃないですか。
「でもこういう職場、いまの日本でも山ほどあるだろうな」とか浮かんでくるのを必死で押さえつけるじゃないですか。組合のトップがセクハラ野郎のヤリチンって地獄かよ。
舞台上では主役バカップルがすんげえ楽しそうに歌い踊ってるじゃないですか。
すんごい座り悪いよね。
(何度も言いますがパフォーマンスは素晴らしかったんですでも人によっては闇を感じるうえにそれを登場人物たちが無かったことにするからああああああ)


パジャマゲームの縦軸が賃上げ闘争ならば横軸は主役カップルのラブストーリーなのですが、そのラブストーリーも現代感覚だとかなり怪しかったです。
だってこいつら、対話してない。
主役カップルは工場長×組合の女性取りまとめ役という考えうる限り社会ステータス上最悪の組み合わせ。お互い一目ぼれしたものの、最初はヒロイン側が付き合いを拒否します。クレバー。
しかしヒーローが押し切る形で(妥協っつってたけどあれはゴリ押しだ)ヒロインは流されてバカップル化。
まあそれはいい。足元が地雷原なのを忘れて舞い上がり、事故ったのもしかたないとしよう。恋愛ってのはそういうものだ。

でも一度痛い目みたら学ぼうよ!?
具体的にはちゃんとお互いの話を聞こうよ。二人とも「俺の話を聞け」ってばっかりで「お前の話を聞かせろ」とは言わないの、劇中の賃上げ闘争レベルで平行線だったぞ。
恋愛がらみのナンバー、基本的には「あなたが好き(そのために私は困っている)」しか言ってねえの私は知っているぞ。

これがですよ。最終的に二人が対話し理解し妥協しあうことによって、労使間の相互理解と妥協が生まれたら美しいじゃないですか、物語として。セカイ系じゃないですか。
そんなことに全然ならないんですよ。
工場長が(恋愛がモチベーションになったことは否定しないけど)一人で頑張って、妥協に至るキーを獲得して社長をうんと言わせただけです。
解決の直前に二人がしたのは「言い訳をさせてくれ」「あなたの話なんか聞きたくない」という最高にすれちがった会話。
工場長よ、「労使間交渉のゴールは妥協です」ってお前が言ったんだろ……。妥協するには相手の立場を知らなきゃいけないんだよ……。
そして賃上げにOKがでたことで、二人が劇中のトラブルを水に流すことでハッピーエンド。でした。


続かねえー!ぜってえこの二人続かねえー!
ヒロインがふつうの性格だったら別だけど(この時代にしては珍しく)自分の意志を強く貫くタイプだからいつか絶対似たようなトラブル起きるー!
そのときの解決策が今回見出されてないー!アウトー!

……って思いましたね正直。
いや、トラブルが起こるたびに別れたりくっついたりする気なのかもしれないですけどね。迷惑だけどあの二人っぽさはある。


ぶっちゃけ脇役カップルのほうがよっぽどコミュニケーション取れてたんですよね。年季はいってるのもあるでしょうが。
彼氏がヤキモチ焼きで、セクシー秘書の彼女はスキンシップ過多なタイプ。彼氏はいつも彼女の一挙一動にハラハライライラしている。
ハンサムな工場長に秘書がメモを残したのを「なんだこれは!」とキツく詰め寄る彼氏。秘書が「言いがかりはよして。中身を読みなさいよ」と促すと、内容は本当にただの業務メモ。愕然とする彼氏に「それ、モールス信号でI love youって意味だから」と捨て台詞を残して秘書退場。

……ってシーンが冒頭にありましてね。これだけでちゃんとコミュニケーションが取れてるのわかるじゃないですか。
彼氏は早合点してキレるけど「どういうことだ」って彼女に話させようとするし、彼女も彼女できちんと反論して怒りの表明(皮肉)ができている。
(このレベルでコミュニケーション取れてるって主役カプどんだけだって思うでしょ?ほんと対話してないんですよ)
秘書カップルは安心してみていられました。幸せになれ。大塚千弘さんのセクシー秘書グラディスくっそかわいかったので、彼女を見るためにもう一度劇場に行きたい気もする。めちゃめちゃ可愛かった。

 

 


ここまで書いたことがいちゃもんだってのは重々承知してるんですよ。
でもモヤモヤしたし、モヤモヤしたということが良い兆候であることも知ってます。
21世紀日本の感覚でパジャマゲームが受け入れがたいということは、60年前よりは現代はかなり進歩しているという証だからです。

私はセクハラがまるで何でもない事かのように描写されているのは受け入れられないし、男女が(むろん同性同士でも)対等に対話していないのを良い恋愛とは思わない。2時間残業がデフォな職場は少なくともグレーだと感じるし、盲目的な信頼は害だと考える。
あと登場人物が状況を作るためのコマになっている作品はあまり美しくないと思うし、コメディであっても辛い描写は濃くやっていいと思うし、ペラいキャラが主役級にいると辛く感じます!!(とくに主役とチャーリー!)

社会もミュージカルも進歩してる。いまは1954年じゃない。
それをはっきり感じられただけでも、パジャマゲームを観に行ったのは正解でした。
かくあれ。進歩してゆけ。21世紀の私たちを置いていけ。