ハリハリのブログ

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五千字以上の二次創作小説が書ける!~書きたいところから書く小説技法~

小説技法の話をしたくなったので、ここ一年ほど私がやっている作業内容をまとめてみました。

 

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目標は五千字前後の二次創作小説を書けるようになること。
想定しているのは、以下のような状況の人たちです。
(1)二次創作小説を書いたことはあるけれど、三千字台くらいのボリュームしか出せない
(2)二次創作小説を書きたいけれど、プロットというものがつくれない
(3)プロットは書けるけど、そこから本文が書けない

 

ざっくりと流れを先にお見せすると、以下のような感じです。

一番いいシーンを書く(工程1,2)

オチを書く(工程3)

メインシーンとオチに合わせてプロットをつくる(工程4)

本文を書く(工程5)

推敲をする(工程6~8)

投稿する(工程9)

 

名付けて、「書きたいところから書く小説技法」です。
それでは、詳しくご説明しましょう!

 

 

1.いちばん書きたい部分を書く(メインシーンの作成)

小説を書きたい!と思ったからには、思い浮かんでいるシーン・情景・セリフその他があるはずです。
一般的には、本文を書き始める前にプロットをつくれと言われますが、そんなのは後回しです。まず、一番書きたいシーンをいきなり書いてしまいましょう。だいたい300~500字が目安です(それ以上書けそうなら、書いてしまってもかまいません)。
このシーンを今後「メインシーン」と名付けます。
現状浮かんでいるアイディアがセリフひとつだったりする場合は、がんばって膨らませましょう。誰が誰にその言葉を言っているのか、言われた側のリアクションは?などを想像すれば、案外するすると行くのではと思います。


ルールとして、この工程で書くシーンはワンシチュエーションにしましょう。
ワンシチュエーションというのは「描かれている場所・時間が移動しない」とここでは定義します。300~500字の間に過去や未来に飛んだり、最初は喫茶店で話していたのに100字過ぎたあたりでいきなり自宅に来たりしない、ということですね。慣れてきたらこのルールは適宜無視して大丈夫です。

まずはこの作業に集中してください。
300字以上書けたらまた会いましょう。




書けましたか?
……素晴らしいっ!
メインシーンの執筆、お疲れ様でした!そして、おめでとうございます!
これであなたは、作品を投稿する権利を得ました。
意味が分からないですか?では、あなたが投稿したいと思っているサイトに出かけて、新着小説の一覧をざっとながめてください。
三ページもめくればあるはずです。文字数が数百文字の作品がひとつやふたつ。

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そう、一番面白いシーンを書いたということは、「面白い」と思ってもらえる可能性のある文章が手元にできたということ。それを投稿してしまえば、あなたが見せたかった最高に萌える(可愛い・かっこいい・面白い)シーンを世界に発信することができます。すでにその権利があります。プロットで挫折していたら、決してできなかったことです。
途中でどうしても詰まってしまったら、いま書いたメインシーンを投稿しちゃいましょう。気が楽ですね。

しかし、今回の目標は五千字くらいの作品をつくることなので、ひととおり喜んだら次の工程に進みましょう。


が、そのまえにひとつ覚えておいてください。
いま書いたメインシーンが、これから完成させる小説の主役です。メインディッシュです。残りのシーンは、メインシーンを引き立たせる脇役です。この先に書くシーンがメインシーンにうまくつながらなかった場合、かならずメインシーンが優先されます。
いま書いたシーンが一番素敵で面白い部分だ、ということを覚えておいてください。

 

 

2.メインシーンからヒントを拾う

さきほど書いたメインシーンをよく観察してみてください。そこには、作品を完成させるためのヒントがつまっています。大きく分けて下記の2点です。


(1)メインシーンが序盤・中盤・終盤のどこにあたるのか
(2)メインシーン成立に必要な5W1H

 


ひとつずつ説明していきましょう。

(1)メインシーンが序盤・中盤・終盤のどこにあたるのか

メインシーンが教えてくれるヒントの一つは、作品全体の構成です。
「起承転結」や「序破急」というやつですね。
私の場合はもっと単純に、序盤・中盤・終盤でとらえています。直感的に言いかえると、「ツカミ・展開・オチ」です。
もちろん、使い慣れている概念があればそれを使ってしまって構いません。とにかく、メインシーンが全体のどこにあてはまるのか、どこに入れればもっとも魅力的かを考えましょう。
個人的には、迷ったら序盤が一番いいと思います。最初に素敵なシーンをもってくるのはセオリーのひとつなので。

 

(2)メインシーン成立に必要な5W1H

300~500字も書けば、そこにはたくさんの情報がつまっています。分析方法はいろいろありますが、ここではわかりやすく5W1Hに沿って分解してみましょう。

  • いつ:季節・時間帯(原作のどの時期にあたるのかも重要)
  • どこで:場所・天候(服装や小物もチェック。たとえばマフラー、傘、帽子)
  • 誰が:最低限登場するキャラ(メインシーンでは登場していなくても、会話文中にでてくるなら要チェック)
  • 何故:キャラの行動の動機
  • 何を:メインシーンで起きる出来事
  • どのように:メインシーン中のキャラの感情(「AがBを殺した」というシーンでも、ゲラゲラ笑いながら殺したのか、涙をこらえながら震える手で刺したのかで全然違う)

ざっとこのような情報をメモ書きで構わないので書き出しておきましょう。次以降の工程でとても重要になります。不明な部分は不明、でもかまいません。
ヒントを拾っている間に、シーンが浮かぶ場合もあると思います。その場合は直接本文として書いてしまうなり、メモ書き程度で残しておくなりしてください。工程4、5で使えるかもしれません(無駄になる可能性もあります)。

 

3.オチをつける(メインシーンが序盤or中盤の場合のみ)

この工程は、メインシーンが終盤に当たる場合は不要です。

メインシーンが序盤or中盤の場合、まずするべきことはオチをつけることです。どう終わるのかを決めます。読後感にもろに影響する部分なので、自信をもって見せられるオチがあると心強いです。
スッと思いつけばいいのですが、思いつかない時は工程2.で書き出したヒントが生きてきます。

たとえばメインシーンが序盤で、AがBへの恋心を自覚するシーンだったとしましょう。
メインシーンから拾ったヒントに「季節は冬」というのがあったとします。そして惚れられたBは高校三年生だったとしましょう。冬、高三とくれば、受験か卒業あたりがキーワードとして思い浮かぶ。じゃあ「卒業式にAがBに告白をする」というのはオチとして良いんじゃないだろうか……といった感じで想像力を駆使していきます。
最高のオチが思いつくと、おそらくシーンが本文を書けるレベルで浮かんできます。そしたら書いちゃいましょう。メインシーンと同様、300字~500字くらいが目安です。もっと書けるなら書いてもかまいません。
書いたら工程2と同様にヒントを拾っておくと、次以降の工程がとても楽です。

 

4.説明するべき情報を整理する(プロットの作成)

3までの過程で、メインシーンとオチが固まりました。この先の工程では、残りの部分の文章を作成していきます。
メインシーン以外の序盤・中盤は、メインシーンとオチに説得力をもたせるための説明をする部分です。どんなに少なくても大小合わせて20点くらいは説明するべきことが一本の小説には含まれています。
たとえばAがBに一目ぼれをする(序盤・メインシーン)⇒AがBに告白をする(オチ)という話ならば、

  • 主要登場人物
  • 主な舞台となる場所
  • 一目ぼれする出来事が起きるまでの過程
  • AがBを好きになった主な理由
  • 恋愛感情が高まる過程
  • 告白をするという決断をした理由
  • 障害になるような事実(性別、年齢etc)

……などなどを説明しなければなりません。

日常生活で複雑な物事を説明するときと同様、小説でもたくさんの情報を伝えるときはその順番や方法が大事になります。計画を立てなければなりません。
しかも、私たちが書こうとしているのは取扱説明書ではなく小説です。エンターテイメントです。ただ説明するだけでなく、面白おかしく伝える必要があります。両方やらなくっちゃあならないってのが小説のつらいところですね。
そこでやっと、プロット(計画書)の出番がきます。

メモ帳でもなんでもいいので雑に書けるものを開き、メインシーンとオチをまず置いたあと、必要な情報を、どのようなシーンで説明していくかを計画していきます。もちろん、シーン全体を最初から最後まで通して読むとひとつのお話として成立していることが必要です。
ワンシーンごとに設定しておくべき内容はやっぱり5W1Hですが、適宜省いてしまってもいいでしょう。最低限誰が何をするのかと、説明される情報がはっきりしていればOKです。

注意することは2点。
1点目。説明シーンは多すぎないほうが良い。工程1でお話ししたとおり、主役はメインシーンです。説明シーンが増えれば増えるほど、主役が埋もれやすくなってしまいます。最低限にしすぎると無味乾燥な小説になってしまいますが、あれもこれもと詰めすぎるよりは、必要な情報が網羅されてればOKと考えたほうがいいでしょう。
また、後工程でお話しする理由により、どうせシーンはふくらみます。

2点目。一番最初のシーンは大事。メインシーンが序盤でない限りは、この工程で序盤がどうなるかが決まるはずです。序盤を「ツカミ」と言い換えたとおり、最初の200文字くらいで読者をつかめるのが良い小説の必要条件です。WEB媒体ならばとくに。
難しいでしょうが(というか私も別にできちゃいませんが)、メインシーンまでガーッと連れていけるくらいの魅力を最序盤で出せるようにプロットを組む努力は非常にコスパがいいのでお勧めです。

 

5.プロットに沿って本文を書く

さあ、いよいよ本番です。プロットに沿って本文を執筆していきましょう。
ルールはとくにありません。がんばって書いてください。この工程は各々のスキルとセンスと努力がすべてです。コツがあるなら私が知りたいくらいです。おもしろおかしく説明をする、という技術はそれだけで本一冊書ける話ですし、ネットにもいろいろヒントが転がっているので各自興味があれば調べてください。

とはいえ、少しでも楽になるヒントを出しましょう。
まず、頭から書く必要はありません。プロットを創っていて「これなら書けそう」と感じたシーンから書いてください。つじつま合わせは後からで大丈夫です。書く順序がばらばらでも空中分解しないためにプロットをつくったのですから、安心して書けるところから書いてください。
そして、ワンシーン書けたら工程2と同じようにヒントを抽出してください。別のシーンを書くヒントになります。
どーーーーーーしても書けないシーンがでてきたら、プロットの修正を検討してください。メインシーンに影響がなければ、より書きやすい形で修正するのは問題ありません。
シーン中にうまく書けない部分がでてきたら「※ここは○○な部分※」とだけ書いてあとから埋めても大丈夫です。私はよくやってます。「※この辺で瀬戸と花宮が頭の良さそうな会話をする※」とか死ぬほど頭の悪いことを書いてます。大丈夫です。
とにかく、ありとあらゆる手段を駆使して一本のまとまりがある本文をつくりあげることに全精力を傾けてください。

誰に聞いてもここがおそらく一番労力のかかる工程だと思います。マジの天才をのぞいてみんな苦しいところですので、がんばってください。

書きあげたら、まずは自分を思いっきりほめてください。お疲れ様でした!
〆切が迫っているときを除き、一度ざっと頭から読み返したら一晩寝てしまうことをおすすめします。そのほうが次の工程がはかどるからです。

 

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6.伏線を補充する

さて、一晩あけたらもう一度本文を読み返してみましょう。
誤字脱字をはじめとして直したいところは山ほどあるでしょうが、まず注目してほしいのはメインシーンとオチに説得力があるか?です。

5までの工程で書いた本文を「草稿」とすると、草稿はたいてい説明不足です。
たとえば失恋したAが自殺をする、という結末だとすると

  • Aがとてつもなく相手を好きであること
  • 自殺をするようなメンタル構造をしていること
  • 外部が止められない状況があったこと

などを説明する必要があります。草稿時点ではそのどこかが抜けていたり、不十分だったりします(とてつもなく好き、とかは表現も難しいですし)。
不十分な点に気づいたら、本文中に補充しましょう。単純な見落とし(場所や時間等)であれば既存のシーンに埋め込んでしまったほうが楽ですが、重たい情報のときはシーンを増やす必要があるかも知れません。うまく調節して追加してください。これがあるので、プロット時点でのシーンは少な目でOKなのです。

メインシーンとオチへの説得力がしっかりできたら、今度はすべてのシーン間できちんと説明が足りているかを確認してください。たとえば中盤にAとBが喧嘩するシーンがあったら、きちんと火種があるか、喧嘩をするような性格をしているという描写があるか、等です。メインシーンやオチほど神経質にならなくてもいいですが、気づいた部分は補充していきましょう。

 

7.描写をブラッシュアップする

これまで聖域としてきたメインシーンにふたたび手を入れるときが来ました。
この工程の内容は単純。主役であるメインシーンと、準主役であるツカミとオチのクオリティを最大限まであげることです。
もてる技術と根性を駆使して最大レベルに読みやすく、面白く、魅力的な文章にしてください。
細かい技術については現状の私の知識では説明できないのですが、無駄な指示語を省くとかリズムやテンポに気を使うとかそういう話です。
ここでするべきことは魅力を増すことです。説明をおぎなうことではありません。工程6とは明確に意識をわけてください。
場合によってはメインシーンに入っていた情報を削る必要も出てくるでしょう。その場合は、別のシーンでその情報を補ってください。
この工程が、作品の「顔」のクオリティを決めます。それなりに苦しいですが、楽しい部分ですので楽しんでこーぜ。


時間があるときは、6~7の工程を何周かするとクオリティが比例して上がっていきます(二週目以降は、メイン、ツカミ、オチ以外のシーンのブラッシュアップもチャレンジしてください)。とくに情報の抜け漏れは、回せば回すほど発見率と埋め込み精度があがります。ドンデン返し系の作品をつくるなら、頑張りどころです。

 

8.最終調整

作品をアップする前の最終調整です。誤字脱字をチェックしたり、!や?のあとにスペースを追加したり、"~。」"みたいになっているのを削除したり、段落頭に一字下げをしたりはここでやります。
タイトルやキャプションも準備しましょう(魅力的なタイトルのつけ方は私が教えてほしいくらいなので、割愛)。

 

9.投稿する

pixiv等お好みの媒体に投稿します。必ず本文のバックアップを手元に残してから作業しましょう。データが飛んだら泣くに泣けません。


これで全工程が終了です。お疲れ様でした!

 

 


以上、全9工程が五千~二万字くらいの小説に対応できる作業工程になります。

最後にあらためて全体の流れを提示しておきます。

一番いいシーン(メインシーン)を書く

オチを書く

メインシーンとオチに合わせてプロットをつくる

本文を書く

推敲をする(情報の補充・ブラッシュアップ・細かい修正と仕上げ)


メジャーな小説技法と一番違うのは、メイン部分とオチをさっさと書いてしまうところです。
理由は上記に挙げた通りなのですが、補足するならば「思いついた最高のシーンってさっさと書きたくない?そのほうがテンションあがらない?」みたいな動機です。いろいろ試した結果、これがいまのところ一番楽でした。

慣れてくるとプロットなしでも一万字くらいならノリで書けるようになります。まあ、頭の中にあるプロットを書き出す手間を省けるというだけですが。

 

投稿数二十数本(+同人誌二冊)のくせに生意気にも小説技法など書いてみましたが、参考になりましたら幸いです。
みんな小説書こうぜ!瀬花をくれ!!!

 

補足1

文字数を増やしたいときは、ツカミとオチの距離を広げるのがおすすめです。
「一目ぼれ→告白」よりも「一目ぼれ→同棲」のほうが距離が遠い、状況の変化が大きいですよね?すると説明することが増えるので、勝手に文字数は増えていきます。労力も増えますが。