ハリハリのブログ

人に見せても良いと判断した思想感情を記録しておくための保管庫

ケーススタディ☆書きたいところから書く小説技法

前回記事が予想以上に伸びてプルプル震えております、ハリハリです。
1000view/日を初めて突破しました。ありがとうございます!

 

 

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前回は抽象的な説明に終始していましたので、今回は私が最近pixivにあげた小説を例にケーススタディ回といたします。
よろしければ、一度下記リンクから本文をお読みください。理解が深まるかと思います。

あ、黒子のバスケ・霧崎第一の二次創作になりますので、苦手な方はここで戻ってください。

www.pixiv.net

 

 

では、前回ご説明した全体の流れを再掲してから、実例の紹介に入りたいと思います。

一番いいシーンを書く(工程1,2)

オチを書く(工程3)

メインシーンとオチに合わせてプロットをつくる(工程4)

本文を書く(工程5)

推敲をする(工程6~8)

投稿する(工程9)

 

 

 

0.アイディアが思い浮かぶ⇒妄想する

それはハリハリが仕事中にど忘れをしたときにやってきた。
間抜け面でうんうん言いながら思い出そうとしていたときに降りてきた「瀬戸健太郎がど忘れをしたらめっちゃ面白いのでは???」という電波。
すごい困った顔をしながら一生懸命思い出そうとする瀬戸の顔が浮かび、最高にキュートだったので執筆を決定。その日は一日中ハッピーだった。結局ど忘れの内容は思い出せなかったけど。

 

1.いちばん書きたい部分を書く

瀬戸健太郎がど忘れをするシーンをまず書き出す。
ハリハリの場合は情景が動画+ジオラマで思い浮かぶため、適宜脳内で観察をしていく。すると花宮がすっげえ悪い顔をしているのを発見したので、その描写も織り込んだ。


※これ以降引用の体裁で載せている文は、現在アップされている文章と微妙に異なりますが、推敲時に書き足された部分を削除して実際の作業状態に近づけるためです。


「……あれ? あれ、何て言ったっけ」
 一軍のみの自主練習、という名の強制練習後の帰り支度の最中。聞きなれないセリフが、ふいに山崎の耳へ飛び込んできた。
 珍しい言葉ではない。むしろ家でなら山崎の母親だって三日に一度は言っている。しかし陳腐なセリフが陳腐たりえるのは、発言者が常人である場合だけだ。
 山崎は声の出どころへ視線を向けた。
「あー、ど忘れだ。花宮、あれ、あれわかる?」
 虚をつかれたように口を半開きにした花宮真が、目の前の男を見つめているのが視界に入る。
 花宮の前では、IQ160を誇るバスケ部No.2の頭脳の持ち主、瀬戸健太郎が、眉根を寄せ、視線をうろうろとさまよわせていた。何かを思い出せない人間の典型的なしぐさだ。
「えーっと、なんだっけ、あれなんだけど……」
 花宮が呆けていたのは一瞬で、すぐにその唇は半円を描いた。
 気づけば部室にいるレギュラー全員が瀬戸を注視していた。瀬戸には花宮の笑みも周りの視線も目に入っていないようで、手をさまよわせながら海馬を探るのに没頭している。
「なんだっけ、思い出せない。あー、気持ち悪い」
 うめきながら、瀬戸は右手の指先をそろえて喉のあたりにあてる。
「ここまで出かかってるのに――」
「ぶふっ」
 ついに原がふきだした。
 それを合図に、部室が笑い声に包まれる。
「ぶはっ! あーっはっはっはっ!」

 

2.メインシーンからヒントを拾う

上記のシーンから、必要な情報を洗い出す。

  • 日時:練習後。季節はいつでも可。
  • 場所:霧崎第一のバスケ部部室
  • 登場人物:バスケ部レギュラーがほぼ全員居る。主役は瀬戸健太郎。準主役は花宮、視点は山崎弘とする
  • 出来事:瀬戸がど忘れをした。花宮が何か悪巧みを思いついた。残りの部員は爆笑
  • 動機:花宮→他人の不幸は蜜の味。他のメンバー→成り行きのため、動機らしい動機はなし
  • 各キャラの感情:瀬戸→混乱と羞恥。花宮・他の部員→瀬戸をいじめちゃろうと思っている

シーンの性質から、どうみても序盤がふさわしいため、この部分をツカミに持ってくることを決定。

 

3.オチをつける

花宮が悪い顔をしていたため、ど忘れをネタに花宮が瀬戸をいじめる話になるだろうと想像。
⇒ど忘れをした単語当てゲームをさせた挙句、花宮は最初からその単語がわかっていた、というオチを思いつく
⇒前々から瀬戸に言わせたいと思っていた「花宮、きらい」を言わせるチャンスだ!と一人で盛り上がる(深夜、真顔でフラワーロックのように揺れるハリハリが目撃された)

 

上記のような思い付きをもとに、オチの文章を書く。

「あーっもうわかるかよ! ○○とかじゃねえの!?」
「――ヤマ、正解」
 とつぜん目の前に突き出された白い指。
「…………えっ?」
 山崎は瞬きをした。そんな、馬鹿な。
「うあーっ、そうか終業式かあ! なんだよ死ぬほど悩んだー!」
「ひらめくかどうかの差だったな」
 無駄に大騒ぎする原に、無表情でうんうんとうなずく古橋。
「基礎練2倍は回避っ! 助かったぜザキ!」
 松本が山崎の背中をはたく。
 山崎は眉をひそめた。
 正解を導き出した達成感よりも、何かがちぐはぐなかんじが気持ち悪い。まるで山崎のほうがど忘れをしてしまったようだった。
「……花宮」
 絞り出すような、低い低い声。瀬戸がゆらりと立ち上がり、花宮をにらみつけた。この騒動のきっかけをつくった男は、思い出せたことを喜ぶどころか先ほどとは比べ物にならない険しい表情を浮かべている。
「花宮もわかんなかったんじゃ――」
「んなこと、ひとっことも言ってねえだろバァカ」
 小さく舌を出した主将の表情で、山崎は違和感の正体に思い至る。
 そうだ、瀬戸がど忘れをしたのは花宮と会話している最中。会話が中断したのは花宮も瀬戸が何を言おうとしたのがわからなかったから……そう、皆が思い込んでいた。
 だが花宮はとっくの昔に、少なくともクイズ大会が勃発する前から「○○」にたどり着いていて、だからこそ山崎に「正解」と言えたわけで、つまり……瀬戸と、レギュラー全員は、この性悪な部長にからかわれていたのだ。
 瀬戸は黙って床を見つめ続け、花宮はそんな瀬戸をにやにやと見上げていた。廊下から聞こえる雑談が、いやに部室に響く。
 巻き込まれたレギュラーたちは皆、固唾をのんで瀬戸の反応を見守った。
 そして。
「……花宮、きらい」

 IQ160の頭脳がようやく吐き出したセリフは、部室に再度の爆笑を巻き起こしたのだった。

 
この時点ではど忘れした単語にふさわしい言葉が思いついていなかったので、とりあえず「○○」で仮置きし、先に進む。

 

4.プロットの作成

工程3までの時点でわかっていたことをもとに、プロットを作成する。
出ている情報に対して演繹と帰納を繰り返していくのが基本。
たとえば

<演繹>
瀬戸のど忘れ⇒部員爆笑⇒原や山崎が瀬戸をからかいはじめる(ゲス野郎どもだから絶対やる)

帰納
単語当てゲームをやらざるをえなくなった理由は?⇒なにかしらのペナルティ⇒喧嘩?⇒瀬戸がからかわれすぎてキレた?⇒マジでキレちゃうと収拾がつかないので未遂にしよう

上記のような思考を繰り返して、(脳内で)できたプロットがだいたいこんな感じ。
ちなみに、ここに至っても肝心のど忘れした単語は決まっていなかった。


①瀬戸がど忘れをする

②部員が爆笑、瀬戸をからかう(原が率先していぢめる)

③瀬戸がキレて喧嘩になりかける

④花宮が部員をとめ、ど忘れした単語当てを指示する。ペナルティは基礎練2倍

⑤部員たち、必死で単語を考える(推論⇔ヒントの繰り返し)

⑥ザキ、単語を当てる

⑦花宮が最初から単語をわかっていたことが発覚。「花宮、きらい」

 

5.本文を書く

がんばって書く。
とりあえず思いついた端から書いていっても、最終的にカット&ペーストを繰り返せば形になるのでどんどん書いていく。
書いている途中で「単語は『終業式』でいいかな」と思ったため、その前提で本文を書き進めていく。うまくつながりそうだったので本採用。行き当たりばったりがすぎる。

 

6.伏線を補充する&7.描写をブラッシュアップする

本文作成中に「終業式」が話題になるような時期であること=1学期か2学期の終わりごろであることが発覚した。夏と冬どっちのほうが単語の範囲が広そうかなーと検討した結果、冬のほうが書きやすそうだったので2学期ということにする。
その前提で、各シーンに伏線を補充。また、単語当てゲーム部分の緊張感を高めたり、オチの説得力を増すためにいろいろ仕込んだりした。
たしか3周くらい推敲につかった。

ちなみにさきほど工程1で提示したメインシーンを最終版と読み比べていただくと、あきらかに最初に書いたバージョンの方がテンポがいい。必要な情報をメインシーンの中に織り込んでしまったための失敗。
こういうことになってしまうので、工程6(情報補充)と7(ブラッシュアップ)は意識をはっきり分けよう。

 

 

 

工程8以降は単純作業なので割愛。

 

 

以上、拙作「ど忘れ・ぱにっく」をモデルケースにした「書きたいところから書く小説技法」の使い方でした。

クッッッソ適当に書き進めている様子がおわかりいただけましたでしょうか。

いや、本当に文才溢れる人はこんな馬鹿みたいなことやってないとは思うんですが、あがくのであればこれくらい意地汚くやってもどうにかまとまります。
書けるところから書く、大事です。

 

 

 

余談

過去最高にギリギリかつ適当だったのは、花宮の後輩という設定のオリキャラの名前。最終的に「ロキ」というあだ名に決まったのですが、アップする当日までニックネームも本名も決まってなくて、本文を書き進めている間は「仁科」で置いてました。誰だよ。
思いついた直後に急いでそれっぽいエピソードを混ぜ込んでごまかしたのはいい思い出。

 

(↓ロキが初登場する回)

「霧崎第一のゲスな後輩たちの話」/「ハリハリ@黒ステ圧倒的感謝」の小説 [pixiv]