ハリハリのブログ

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遙かなる時空の中で3感想 梶原景時について語りまくってみた

はい、誰も待っていないでしょうがお待たせしました。
前回予告したとおり、梶原景時についての記事です。
まさか乙女ゲーから推しキャラ上位ランカーがでるとは予想もしていなかったのですが、大好きです。

以下前回同様ネタバレ祭りですので自己管理をお願いします。

 

 

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惚れたきっかけ

そうですね、まずは景時に落ちたきっかけからお話ししましょうか。
景時の初回スチルは、庭で鼻歌なぞ歌いながら上機嫌に洗濯物を干しているシーンです。そのせいで第一印象は「お母さん」。あーなるほどね、その枠ね。ねーな。(おさんどんキャラは守備範囲外)
……というのがファーストコンタクトでした。第一印象だけならブービー争いというかんじ。
ほどなくして景時が「洗濯が好きで戦が嫌いっていうの、内緒にしてくれない?」と頼みに来るシーンがあり、たんなる軟弱ものではない、むしろちょっと苦労してそうな雰囲気は感じたのですが、印象が大きく上がることはありませんでした。

そんな景時が一気に最推しへ駆け上がったのは、花火イベントです。正確には、花火スチルのあとの会話シーン。
景時の使用武器は源平時代にも関わらず、銃。射出は火薬ではなく陰陽術でやっているそうですが、問題はそんなところじゃない。異世界とはいえ元寇前になぜ銃が発想できた。天才か。
などとプレイヤーが驚いていると、景時はこう続けるのです。
陰陽道の修業をしたのはいいものの、才能ないし本番に弱いのでいざというときに術を失敗してしまう。だからこうしてあらかじめ準備しておけば正確に術を発動できる道具を作った。昔から道具をばらしたり組み立てたりするのは好きだったから」

 

 

……好き!!!!!
あなたとなら結婚できる!!!!!

 

すみません、ひとりで盛り上がってしまいました。
どこが私の琴線に触れたのかと言いますと、「求められる結果を出すために、もっとも合理的な手段を模索し実行できる」男であることが凝縮された発言だからです。はい、そういう男が好きです。
たとえばこれが九郎だったら「本番に弱いなら千回でも万回でも練習する!それが兄上の望みだ!」みたいな脳筋解決をはかるんですが、景時はそうじゃない。自分ができることを俯瞰して、より成功率が高いと踏んだら正攻法じゃないやり方を採ることができる。しかも自分が好きで得意なDIY性を盛り込んでさらに能率を上げている。(モチベーション管理は長期的な成果に不可欠です)
その考え方は彼の軍事行動にも表れていて、陽動やら周辺勢力への根回しやらをちみちみ行うことでコスパ良く成果をあげることを好みます。積極的はったりを是とする男です。
一騎打ちの前に名乗りをあげるような時代、正々堂々ものごとに挑まないのは恥ですからそもそも迂回路が頭に浮かばない人も多いはず。その中で、きちんと楽で正確で自分に向いている方法を選べるのは彼の強さだと思います。

 


「一緒に逃げてくれ」はヘタレじゃない

景時恋愛ルートのハイライトは壇ノ浦直前、「一緒に逃げてくれないか」と主人公に頼み込むシーンだと思っています。スチル見て死ぬほどきゅんときた。あのすがりつき方最高ですよね。井上さんのボイスもいいですよね。
あのシーン、景時そんな好きじゃない人からは「ヘタレだ。ダメ男だ」って言われてるんですが、逆なんですよ。あれは景時がやっと自分と向き合い始めたからこその混乱です。心が折れて膝をついて年下の女の子に縋り付くのはむしろ進歩なんです。

頼朝の臣下になってからずっと景時は、頼朝の命令と、家族や郎党の安寧と、前者二つを守るために犠牲にするものとのバランスをとることに必死でした。チートパワーをもつ頼朝に逆らえば一族郎党皆殺しは明らか。もし頼朝が気まぐれな暗君であればまだ万に一つを追って逆らうこともあり得たでしょうが、残念ながら頼朝は合理的でした。合理的ということは、利用価値があるうちは景時と郎党の立場は保障されるということ(もちろんできるギリギリいっぱいの仕事をやらされるということでもある)。そのせいで彼はリスクを冒すきっかけをつかめませんでした。
景時自身が語る生い立ちから、そもそも頼朝に仕える前からかなり自己肯定感が低い人格だったことがうかがえます。修行の過程が武芸(向いてない)⇒陰陽道(向いてない)。彼はなまじ目端がきいてしまうので、父の期待通りにできない落胆をもろにあびたことでしょう。
それに加えて頼朝から郎党の命を盾にブラック業務(量も内容も)を遂行し続けたら、ふつうに頭がおかしくなります。人当たりの良い軽薄なお兄ちゃんを演じられただけでも大したものです。しかし、異常な状況でふつうに振る舞えるというのはやっぱりどっかがおかしなことになっているわけで、それが福原での「オレなんてどうでもいいんだよ。怒っても悲しんでも疲れるだけじゃない、君も笑ってよ。駄目な奴だ、って笑えばいい」という発言につながるわけですね。典型的な抑うつ状態です本当にありがとうございました。

ところが遙か3の主人公はハイパーポジティブ女神なので、上記の発言を受けても「景時さんは強い」と言い切り、さらに「景時さんを置いていけない。いっしょにいたい」「あなたに死んでほしくない」と景時を案じるセリフをぽんぽん言ってくれるわけですよ。自分なんてどうでもいい、自分のことにかまけてる余裕はないと思っている人にこれは効く。全快はしないけど、重症すぎて感覚がないみたいな段階からは脱することができます。メンタルの回復がはじまります。

……すると何が起きるかというと、自分が抱えてきたストレスがもろに目に入ってしまうわけです。それまで見る余裕がなかった澱みに、気づかずにはいられなくなる。
ブラック業務と、自分が守るべき郎党と、八葉の仲間と、大事な妹と母親、そして「景時さんといっしょにいたい」と言ってくれる女の子を殺せという命令書。おそらく暗殺命令はこれが最後ではないし、壇ノ浦が終わっても周辺勢力の平定のために戦は続く。
キャパオーバーです。無理です。「逃げたい」ってなるでしょう。
そうやってバッキリ心が折れたところへ主人公が来たら、そりゃあ「オレと逃げてくれ」って言いますよ。現状唯一の精神安定剤だし。「君とならここから抜け出せると思う」って言うよ。逃げ切れる、ではないところがミソです。オレのことを案じてくれる君が一緒なら、逃げたいというわがままを通す勇気が出るという意味です。
(しかしこの記事書くために景時ルートやり直したんですが、「オレと一緒にいるって言ってくれただろ」ってセリフ、井上さんの芝居もあいまって最高に情けない。好き)

この「一緒に逃げてくれ」が景時にとって進歩であると最初に言いました。誰しも覚えがあるでしょうが、何かを乗り越えたいならまずその対象を直視する必要があります。
「オレって駄目な奴だからさ~(だからオレが苦しいのはオレのせいなんだよ)」ではなく、「そもそもこの状況がクソで、未来に希望もあんまりない。オレは精一杯やっているがいつまでも持つとは思えない」ってことを見なきゃなりません。
ここで心が折れっぱなしになっちゃうと景時バッドエンドみたいな悲惨な事態になるのですが、まあそれはそれです。個人的に、「一緒に逃げてくれ」からつながるバッドエンド2本のうち処刑エンドはけっこう好きです。よく頑張ったなって思います。
遙か3の主人公は鬼プレイイングマネージャーなのできっちり尻を叩いて立ち上がらせてくれます。さすがヒーロー。こうしてどうにかストレッサーの本丸に立ち向かうことを決めた景時の逆転劇がはじまるわけです。

 

中間管理職をなめちゃいけない

顔色をうかがうスキル

いきなりトーキョーNOVA(TRPG)を知っている人にしかわからない話をしますが、景時のスタイルはタタラ エグゼグ◎クグツ●だと私は考えています。エグゼグ・クグツと書いて「有能な中間管理職」と読みます。

前述のとおり景時は頼朝の臣下としてすさまじい綱渡りをしてきたわけですが、その間ずーーーーーーーっとやってきたことのひとつは「頼朝の顔色をうかがう」ことだったのは想像に難くありません。
そもそも怨霊退治の道中でも、弱音を吐かない根性がありすぎる女子二人の体力の限界を(本人たちが気付く前に)察知して「オレつかれちゃった~休憩にしようよ~」と言ってくれるような性格です。主君の顔色なんて息を吸うように読んでいたに違いない。

そうやって空気を読む、偉い人の顔色をうかがうのは一般的に格好の悪いこと、ヘタレの所業です。しかし恋愛ルートの大一番で景時が勝利したのは、頼朝の顔色を読みまくっていた経験値がものをいったと言わざるをえません。あのタイミングで押し切らなければ、ブタをロイヤルストレートフラッシュに見せかける手は成らなかったでしょう。
もう私はあの勝ち方大好きで、エンディング聞きながら喜びの舞を踊るくらいでした。だって景時の苦労が最高に報われた瞬間でしょう。幼少期から不本意なことをやらされ続けてきた男が、自己肯定できないミスター器用貧乏が、その中途半端に広い経験値ゆえに勝ちをかっさらうの格好いいじゃないですか!よくやった!

 

敵に回すと怖い男

十六夜ルートに目を向けましょう。
平泉編にシナリオをすすめたプレイヤーはみんな一度はこう思ったはずです。
「景時こっええええええええ!」
不本意なのはにじみでてるし、八葉を解雇されたときに本気で悲しそうなの辛いんですが、それはそれとして九郎一行を追い詰める手に容赦がない。九郎の十六夜ルートで景時に会いに行くと「オレはやるとなったら絶対に勝てる手はずを整えておく。君たちに勝ち目はない」みたいなことを言われて震えあがりました。(しかし今思うと半分はったりだったのかもしれない)
ああ、あと九郎を景時が不意打ちしたあとの選択肢で「もうこれ以上撃たせない!」を選ぶと「どうやって?どうやってオレを止めるんだ?(君はその手段をもってないと知ってるよ)」って静かに聞いてくるの酷えなって思いました。ポジティブウーマンを黙らせるまさかのマジレス。
本人は不本意でしょうが、景時には中間管理職適性がはっきりとあります。ギリギリ無理そうな目標をぽん、と渡されるとちゃんと一生懸命がんばって達成させちゃうからです。頼朝さんマジ慧眼。
悲しいことに中間管理職なので、命令された大目標からのブレークダウンは上手なのですが大目標そのものをつくるのは苦手。というかたぶんそれをするべき、していいという発想が薄い。

 

景時の上司は誰か?

さて、中間管理職ということは上司がいるわけですが、景時の上司は頼朝ひとりだけなのだなと感じるシーンがいくつもあります。
荼枳尼天が取りついている政子は複数のシナリオで、魂の捕食を優先させて源氏軍の不利益になる行動を起こします。頼朝が一貫して源氏政権の樹立と脅威となる勢力の排除を目的としているのとは対照的です。(一部のシナリオでは政子の好き勝手を黙認していますが、政子の戦力を鑑みるときちんと機嫌をとる利益があるためではないかと)
政子の勝手な行動がもっとも目立つのは平泉編で、景時はいくどとなく政子の指示が被害を無駄に増やしていること、頼朝の利益に反する可能性があることを諫言しています。そして一線を超えてしまった景時ルートでは、景時は異様なほどの確信をもって、「あなた(政子)の行動は頼朝さまの目的に反している」と発言し政子に銃口を向けるのです。
銃口を向けたタイミングは主人公のピンチでしたのでもちろん主人公を守りたいという気持ちもあったのでしょうが、わりと「頼朝さまの兵を無駄に使ってんじゃねえよ」という怒りも感じました。いやまあ、自分が身をすり減らして頑張ってるのをバカ女に邪魔されたら腹立つよね、わかるよ。平泉の政子マジで邪魔だからね。

遙か3では頼朝の本心が完全には開かされないまま終わるので、頼朝が荼枳尼天をどう思っていたのかがいまいち不明瞭なのですが、少なくとも殺されて我を失うほどの存在ではなかったんだろうと思います。出なければ政子ラスボスのルートで頼朝があっさり引き下がる理屈が立たないので。

で、何度も言いますが景時は主君の顔色読むの得意マンですから頼朝が荼枳尼天にかける熱量がさほどでもないということはわかってたんじゃねえかなと。そして荼枳尼天の戦力が無くても源氏が大丈夫だってこともわかってたんでしょう。だからこそ景時のルートはどちらも荼枳尼天がラスボス(=景時が荼枳尼天を殺すことを決意する)になりえたのです。

 

明らかに主人公より縁が深い

景時の中間管理職性をお話しする最後として、和歌をひとつご紹介しましょう。
遙か3では個別ルートに入るときに、各キャラを象徴する実在の和歌が表示されます。たとえば譲なら「かぎりとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり」=死に別れは悲しいから生きたい、みたいな歌です。
では景時ルートの和歌はどんなのかというと……
はいドン。

我が君の 手向けの駒を 引き連れて 行く末遠き しるしあらはせ


これは史実の梶原景時源頼朝の使いとして住吉神社に馬を献上したときに詠んだ歌です。
意味としては「我が主君、頼朝さまの馬を奉納させていただきますので末永くよろしくお願いしますゲンジバンザイ」です。
……あんまりこの表現使わないんだけど言っていい?しんどい。

 

その他好きなところ

・髪をおろしてるとセクシー

私は景時の外見けっこう好きなのですが、人によってはデコだしを受け付けないそうで。
そんな人にも寝起きイベントで見られる景時はぐっとくるはずです!というか景時は明るく振る舞ってるか真顔になってるかの立絵ばかりで、完全に気が抜けてる絵が少ないからその点でも貴重だよ!てゆーかマジセクシーだよねあのスチル!井上さんがいかにも寝起きっぽいかすれ声を当ててくれててドキドキするよ!
ちなみに私が結婚したい結婚したいと騒いでいるのは、景時の嫁になったら毎日あのスチルが見れるからっていう理由だよ!

 

傷つく人は少ないほうがいいという一貫したスタンス

景時が「戦わずして勝つ」戦を好む理由の一つに、傷つく人間をできるだけ少なくしたいという考えがあります。その思いは景時以外のルートでよりわかりやすくあらわれます。
とくにはっきりと出るのは白龍ルート。主人公が白龍への思いを深めすぎないようにどうにかやんわり収めたいな~、妹の二の舞はつらいからね、という動機からのもにょもにょとしつつも温かい思いやりを見せてくれます。周りが見えすぎているせいで覚悟決まらないと人に強く出られないのは短所でもありますが私はそんな景時が好きです。

 

喜んでる立絵がかわいい

両手をぐってして目をぎゅっとして喜んでるのめっちゃ可愛い。君には笑っていてほしい。平泉ルートに入ると二度と彼の笑顔が見られないのがさみしいです

 

憂い顔の立絵が格好いい

前髪に手を当てて虚空を見つめるあの立絵好き。頼朝はあの顔を見るために召し抱えたんじゃないだろうか(腐女子並感

 

主景前提の頼景が読みたい(左右はどちらもこれで合ってます)

 


えー、とりあえず以上です!運命の迷宮はいまのところプレイ予定がないので我が愛しの軍奉行についてはひとまずこれを区切りとしたいと思います。
7,000字にわたる益体もない萌え語りにお付き合いいただきありがとうございました!


……あー、ほんと好き。

 


余談

景時CVの井上和彦さん、いまおそ松さんで松蔵役やってるから温度差で風邪ひきそう。
あと遙か6やりはじめたんだけどダリウスが鈴村健一さんだからイヤミと同一人物である事実を脳が拒否する。


余談2

「一緒に逃げてくれ」のひとつ前の選択肢で「死んで英雄になりたかったんですか?」を選ぶと、自分がうまいこと死ぬと英雄として弔われると知った景時が本気で幸せそうに「そっか、英雄かぁ…」ってつぶやくので見たことなかったらご覧ください。あの顔と声で、私は景時がメンタルをおかしくしていると判断しました。彼が楽になりたがっていたのはガチです。